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イチ推し

ピアノ調律師に迫る いい音弾き手の数だけ

◆「羊と鋼の森」で注目

一音一音丁寧に調律をしていく鎌田達也さん=掛川市領家のヤマハハーモニープラザで

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 ピアノの演奏に欠かせない存在である調律師。普段はなかなか見えない彼らの仕事に、光を当てた小説「羊と鋼の森」(宮下奈都さん著)が話題となり、六月には同名映画の公開も始まった。作品の舞台は北海道。一方で楽器メーカーが多く、ピアノ産業の盛んな静岡県も、実は調律師の多い地域だ。音楽のまち浜松で、「いい音」を支え続ける一人の調律師に迫った。

 ポーン、ポーン…。人さし指で鍵盤を押すと羊毛のハンマーフェルトが鋼の弦をたたき、音が響いた。浜松市中区の楽器店「ヤマハミュージックリテイリング浜松店」に勤める鎌田達也さん(54)は耳を澄まし、一つ一つ素早い動きでピアノの調律作業を進めていく。木や羊毛など天然素材でできたピアノは湿度の影響を受けやすい。作業中、自前の湿度計のチェックも欠かさない。

 作業は主に三つ。鍵盤のタッチ感を調節する「整調」と、ハンマーフェルトの手入れをして音色を整える「整音」、そして音の高さを決めて音階をつくる「調律」だ。この三つがうまく合わさって、いわゆる「いい音」ができる。

専用の道具やカスタマイズした調律道具の入った仕事かばんの重さは10キロほどだという=掛川市領家のヤマハハーモニープラザで

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 「人によっておいしいと思う食べ物が違うように、いい音も違いますね」と話す鎌田さん。最適な状態に仕上げても、弾き手から「何か違う」と言われることも。“何か”を探るため、とにかく会話を重ねる。弾いてもらいながら「鍵盤が重いのか」「音の響きが弱いのか」と問い、弾き手の感覚を具体的な言葉へ変換して共有していく。ヒントをつかめば、あとは職人技でピアノと向き合うのみ。

 調律師の腕は、ピアノだけでなく弾き手の支えでもある。鎌田さんはコンサートの仕事の際、調律後も会場に残る。ピアニストから「いてくれるだけでいい」と言われ、そっと見守っているのだ。

 国内では電子ピアノの普及もあり、アコースティックピアノの生産台数は頭打ちとなっている状況。だが、新しい弾き手も現れてきた。「眠っていたピアノをよみがえらせて」。子どもの教養としてピアノを買った親世代が定年を迎え、演奏に挑戦しようとする人も少なくないという。

 鎌田さんは三十四年間の経験を「弾き手の数だけ新しいことへの挑戦があった」と振り返りながら、「いい音を探す毎日は本当に楽しい」と笑顔を見せた。

 <静岡県の調律師> 日本ピアノ調律師協会静岡支部長の降矢透さん(59)によると、協会に加盟する調律師は全国で約2400人、県内では約170人。ヤマハや河合楽器製作所など楽器メーカーが多い県内は、工場でピアノを管理する調律師が多い。「羊と鋼の森」の主人公や今回取材した鎌田さんのように、一般家庭や演奏会に出向く調律師は4割ほどだという。

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大城愛記者(報道部)

 沖縄県浦添市出身。島を出て2年目、記者としても2年目の25歳。地元では三線を習っていたが、音感が悪く、自分で調弦するまでにかなりの時間がかかった。調律作業の取材中、「さっきの音と全然違いますよね」と問われたが、全然分からず悲しい気持ちになった。ちなみに沖縄では調弦のことを「ちんだみ」という。

 

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