トップ > 中日新聞しずおか > 静岡写真ニュース > 記事

ここから本文

静岡写真ニュース

佐鳴湖シジミ復活へ 市民団体が養殖研究10年

3センチ超にまで育ったヤマトシジミを水槽から出した辻野兼範さん=浜松市中区で

写真

 縄文人も食べていたとみられる佐鳴湖(浜松市西区)のヤマトシジミ。約十五年前、「日本一汚い湖」と呼ばれた頃には姿を消したが、市民団体が湖水を使った養殖に取り組むこと十年、完全養殖に繰り返し成功することで湖内での自然繁殖への道筋ができてきた。生育に適した環境も明らかになるなど、佐鳴湖産シジミ復活の兆しが見えている。

 佐鳴湖の東岸。散歩やジョギングする人が行き来する遊歩道沿いに、一棟のビニールハウスがある。入り口には「シジミハウス」の文字。中に入ると、湖から取り込んだ水をためるタンクと縦一・一メートル、横一・六メートル、高さ〇・五五メートルの水槽が三つ。その中の一つから、市民団体「佐鳴湖シジミプロジェクト協議会」副会長の辻野兼範さん(65)が、ハウス生まれの母貝に生ませ、五年目になるシジミを取り出す。大きさは三センチ超。「人の手を加えていない、ポンプアップしただけの水でこんなにも育つんですよ」と胸を張る。

シジミハウス内で育てた左から1年目、2年目、5年目のヤマトシジミ

写真

 ヤマトシジミは縄文時代にも佐鳴湖に生息していたようだ。約三千〜四千年前の縄文時代後・晩期の蜆塚遺跡から、貝殻が多く発掘されている。理科教師の傍ら、中心的に活動してきた辻野さんによると、昭和四十年代初めまでは、佐鳴湖でシジミ狩りを楽しむ姿が見られたというが、水質の悪化で姿を消した。

 水の汚れを示す指標の一つに、化学的酸素要求量(COD)がある。環境省によると、佐鳴湖は全国約百九十の湖沼の中で二〇〇一年度から六年連続でワーストに。家庭や事業所からの排水や汚れがたまりやすい地形などが原因とみられる。ただ、その後、下水道が整備され、水質も徐々に改善。〇一、〇三年度は一リットル当たり一二ミリグラムだったのが、一六年度は八・二ミリグラムとなり下から四番目に。目標値(八ミリグラム未満)を下回った年もある。

写真

 協議会は〇八年度、ハウス内の水槽で木曽川水系の母貝を人工授精させ、その稚貝を湖水で育てたのが活動の始まり。稚貝をさらに母貝に育て、さらに稚貝を作らせるという完全養殖を行ってきた。また、佐鳴湖の各地に稚貝を入れて生育に適した環境を探るなど、実験を繰り返してきた。その結果、水温や濁度が高まる夏場はシジミのろ過作用に負担がかかり、生存率が下がることが判明。一方で、夏場でも下げ潮により、冷たく濁りの低い川の水が入る河口付近ではほぼ生き残れることが分かった。

 「湖内全域でシジミが育つには、濁度が下がるようにプランクトンの増殖を抑える環境にしないと難しい」と指摘する辻野さん。「ヤマトシジミは汽水域の生態系の環境指標になる。ヤマトシジミが復活した時が、あるべき佐鳴湖の姿に戻ったということだ」と力を込めた。

(飯田樹与)

 

この記事を印刷する

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索