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袴田さん再審認めず 高裁、DNA鑑定否定

東京高裁の再審開始を認めない決定に「不当決定」の垂れ幕を掲げる弁護士と涙ぐむ支援者ら=11日午後、東京・霞が関で

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◆弁護側 特別抗告へ

 一九六六年に清水市(現静岡市清水区)で一家四人が殺害された強盗殺人事件で死刑が確定し、静岡地裁の再審開始決定で釈放された袴田巌さん(82)=浜松市中区=の第二次再審請求即時抗告審で、東京高裁(大島隆明裁判長)は十一日、地裁決定を取り消し、再審請求を棄却した。地裁決定の根拠になったDNA型鑑定は「種々の疑問があり、結果も信用できない」と有効性を否定した。弁護団は高裁決定を不服として最高裁に特別抗告する。

 地裁が認めた袴田さんの死刑と拘置の執行停止は「年齢や生活状況、健康状態等に照らすと、逃走の恐れが高まる危険性は乏しい」として維持し、再審請求の最終的な結論が出るまで釈放が続く見通しとなった。

散歩中に「再審取り消し」の知らせを支援者から聞かされる袴田巌さん(左)=11日、浜松市浜北区の岩水寺で(川戸賢一撮影)

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 高裁決定では、本田克也・筑波大教授がDNA型鑑定(本田鑑定)で独自に用いた選択的抽出法を「一般的に確立した科学的手法とは認められない」と指摘。犯行着衣とされた「五点の衣類」の捏造(ねつぞう)の疑いは「捜査機関の捏造を示す明白な証拠はうかがわれず、確定判決の認定に合理的な疑いが生じていないことは明らか」として、検察側の主張を認めた。

 袴田さんは十一日、自宅がある浜松市で過ごした。午後に支援者らから高裁決定を伝えられると「うそなんだよ」と繰り返した。

 第二次再審請求を巡っては、袴田さんは二〇一四年の地裁決定で釈放されたが検察側が不服を申し立て、釈放後に審理が続く異例の展開をたどった。弁護団が期限の十八日までに特別抗告すれば、審理は最高裁に移り、最高裁が再審開始請求を認めた場合、静岡地裁で再審公判が始まる。一方、最高裁が弁護団の特別抗告を棄却した場合、袴田さんが再び収監される可能性が残る。

 死刑囚の再審開始決定が取り消されたのは、免田事件(後に再審無罪確定)、名張毒ぶどう酒事件(第十次再審請求が審理中)に続き三例目。

◆「万能証拠」に疑問符

 袴田巌さんの再審開始を認めた静岡地裁決定を取り消した十一日の東京高裁決定。地裁決定の根拠となった本田鑑定の証拠能力を「明白性が認められない」と結論付けた。

 近年、足利事件や東電女性社員殺害事件など、DNA型鑑定が再審の扉を開いた例が目立つ。だが、今回の即時抗告審では、過去に例のない鑑定の検証が行われた。試料はみそ漬けにされた四十五年前のもので、独自の手法を用いたためだ。個人識別能力が飛躍的に向上し、「万能証拠」と言われがちなDNA型鑑定だが、「科学的手法として確立していない」(高裁決定)場合、今後も司法が鑑定を精査するケースは起こり得るだろう。

 一九八九年に島田事件の元被告に再審無罪判決が出て以降、死刑囚の再審公判は一度も開かれていない。確定判決の脆弱(ぜいじゃく)な証拠構造を断じた四年前の地裁決定。今回、本田鑑定は退けられたが、もともと「五点の衣類」は発見経過などに疑惑の色が濃いものだ。「疑わしきは被告人の利益に」の原則に照らし合わせ、今後も慎重な審理が求められる。

 「取り消しはない」との認識で一致していた弁護団の衝撃は大きい。審理は最高裁へと移る見込みだが、袴田さんは八十二歳、長年支えてきた姉秀子さんも八十五歳。審理の長期化が二人に重くのしかかる。

(静岡総局・西田直晃)

 <旧清水市一家四人強殺事件> 1966年6月30日未明、清水市のみそ製造会社専務宅から出火し、焼け跡から一家4人の他殺体が見つかった。県警は同年8月、強盗殺人容疑などで、元プロボクサーで住み込み従業員の袴田さんを逮捕した。袴田さんは公判で関与を否定したが、80年に最高裁で死刑が確定。翌年から始まった第1次再審請求では、最高裁が2008年に特別抗告を棄却した。だが、同年4月に姉秀子さん(85)が申し立てた第2次再審請求審で、静岡地裁が14年3月に再審開始と釈放を決定。検察側が東京高裁に即時抗告していた。

 

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