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中日レディーズサロン

第201回 女優、作家 中江 有里さん 「読むこと、書くこと〜自分の答えにたどりつくために〜」

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 第二百一回中日レディーズサロン(中日新聞東海本社主催)が九月十四日、浜松市中区のホテルコンコルド浜松であった。女優で作家の中江有里さんが夏目漱石の「草枕」を朗読し、「読むこと、書くこと〜自分の答えにたどりつくために〜」と題して講演した。

 「とかくに人の世は住みにくい」。「草枕」の冒頭は、年を重ねるほど実感する。私たちは普段、悩みやストレスを感じる。私は読書で解きほぐす。

 子を持つ親に「子どもにどんな本を読ませたらいいか」と質問されると、「自由に選ばせたほうがいい」と答えている。親に守られている子どもにとって本を選ぶ行為は、自由に選択できる数少ない機会だ。それは自分の経験でもある。

 小学生の時に両親が離婚した。転校して新しい生活が始まったが、友達ができずなじめなかった。その時、教室で古ぼけた本を見つけた。エクトール・マロの「家なき子」。フランスの児童文学で、旅人に引き取られた孤児の物語だ。

 主人公をかわいそうに思い、(それに比べて)自分はそんなにかわいそうではないと思えた。妹の面倒を見たり、母の代わりに家事をしたりしていたが、(主人公の境遇を思えば)面倒でもやる気になった。

 高校で上京し、ホームシックになった時は宮本輝さんの「道頓堀川」「泥の河」に励まされた。大阪を舞台にした小説で、関西弁が聞こえてくるようだった。内容が面白いから、勉強したいからだけではなく、読書には自分を慰める目的もある。

 「活字離れ」が叫ばれて久しい。高校生の半分は本を一カ月に一冊も読まないとの世論調査もある。でも一年に発行される本は約八万タイトルある。選ぶのは大変だが、本との出合いは一期一会だ。

 本は求めた時にいろんな答えをくれた。でも、本で得る答えは借り物だ。例えば料理本にはいろんなしょうが焼きの作り方が書かれているが、どんなしょうが焼きをおいしいと感じるかは人によって違う。読書を通じて、自分自身の答えを考えるのが大事だ。

 読むだけではなく、書くことにも意味がある。私は小説も書くが、登場人物は自分の半身のようだ。自分で言えないことを登場人物に言わせている。

 私にとって本は、長年の友達のような存在だ。もう一度、読書の魅力を発見してもらえたらうれしい。

 なかえ・ゆり 1973年生まれ、大阪府出身。89年に芸能界デビューし、数多くのテレビドラマや映画に出演。2002年には脚本家としてもデビューし、小説「結婚写真」、エッセー「ホンのひととき 終わらない読書」「わたしの本棚」などがある。年間300冊の本を読んでおり、13年3月から中日新聞の書評コーナー「3冊の本棚」を担当する。

 

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