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東海本社 中日懇話会

第425回 脳研究者・東京大教授 池谷 裕二氏 「脳を知って、脳を活(い)かす」

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 第四百二十五回中日懇話会が八月二十二日、浜松市中区のグランドホテル浜松であった。脳研究者の池谷裕二・東京大教授が「脳を知って、脳を活(い)かす」と題して講演した。

 私たちの脳は主観的だ。例えば高齢とは何歳からのことを指すと言えるだろうか。ある調査では、十三歳の子どもに聞くと「三十歳」と答え、三十歳は「五十歳」と答えた。

 脳は思い込みで物を見るが、自分ではその思い込みに気づかない。それが脳の難しいところだ。「最近年のせいで記憶力が衰えた」と言う人が多い。だが、記憶力は年齢で衰えない。

 いろんな実感があるかもしれないが、どれも気のせいだ。「思い出せないことが多い」のは子どもの頃より持っている知識が増え、覚える努力をしていないから。「すぐ忘れる」のは時間の進みが早く感じられるだけで、「ど忘れが増えた」のも根拠がない。

 米国の調査では、十八〜二十二歳と六十〜七十四歳に単語を覚えるテストをしたところ「心理テスト」だと説明してから行うと成績は変わらないのに、「暗記テスト」として行うと、六十〜七十四歳の成績が悪くなった。これは「年を取ると記憶力が衰える」という俗説を信じ込み、「暗記テスト」と聞いてネガティブな自己暗示をしたからだ。

 私の研究している海馬は記憶をつくる所で「シータ波」という脳波を出す。これは興味がある時に出る脳波だ。シータ波が出ていない時より、出ている時の方が学習速度が速くなるという米国の研究結果がある。生きることに慣れてしまったことも、年を重ねて「記憶力が衰えた」ように感じる理由の一つ。シータ波を出すのは大事なことだ。

 人間は一人ずつDNAが違い、生まれながらにして不平等だ。科学技術の発展で、米国では民間企業が個人のDNAを検査し、どんな病気になりやすいか、知能指数(IQ)や筋肉はどの程度かを調べられ、才能も分かる。

 人間は脳がなければ、DNAに従って予定調和のことしかできない。脳を使って前向きに努力すれば、成し遂げられるものもある。だから脳を活かすことが大切だ。

 いけがや・ゆうじ 1970年、藤枝市生まれ。藤枝東高校などを経て、東京大大学院薬学系研究科博士課程修了。2014年4月から同大教授。専門は大脳生理学で、特に海馬の研究を通じて脳の成長や老化を研究している。「脳には妙なクセがある」「進化しすぎた脳」など著書多数。

 

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