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NIE最前線 教育に新聞を

記事の背後にある心 やさしさ探し

新聞記事を読んで心に感じた「やさしさ」を和歌にして発表し合う児童たち=浜松市中区の県居小学校で

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 大事件や悲惨な事故の記事に目を奪われがちな新聞。でも、ときには人の心のやさしさに触れ、幸せな気分になることだってある。

 浜松市県居小学校(同市中区)の四年生の学年テーマは「やさしさ見つけ」。総合学習の時間で福祉について学ぶ中、思いやりの心のかたちをみんなで話し合ってきた。アイマスクをして校内を歩く“不自由体験”もした。将来、ヘルパーになると決めたクラスメートもいるし、小さな命を大切にしようと学校でウサギも飼うことにした。それでも、よく分からない。「人にやさしいって、どんなこと?」。素朴な疑問に中村美文(みふみ)教諭(46)が投げかけたのは、新聞を読んでみることだった。

 「やさしさ」を探そう−。新聞を読むのはほとんど初めてという児童たち。学校に届けられる中日新聞の朝刊を、四〜五月の二カ月間、全員が毎日欠かさず目を通して、これはと思う記事を切り抜いた。

 ところが、すぐにみんなが気が付いた。最初に目にする一面には、笑顔の写真がほとんどない。それに難しいことばかり書いてある。交通事故とか、殺人事件とか、悲しい記事は毎日のように載っていても、やさしいと思える記事が見つからない。「ないよぉ」。児童たちから困惑の声が上がった。

 「新聞に載っているのは、良くも悪くもそれが事実だから。やさしさだけの世の中ではないことを皆、新聞を見て知るんです。だからこそ、やさしさが尊いんだということも」(中村教諭)

 四年生は今、国語で「説明文」について学んでいる。筆者の意見を知り、それをどんな事実で説明しているかを読み取った上で、自分の感想を述べる。「新聞が伝える事実の背後にあるかもしれない、人々や書き手の心のやさしさを子どもたちと一緒に探ってみよう」。中村教諭はそう考えた。

 「やさしさ、見つけた?」。五月三十日、二クラス合同による総合学習の時間のこと。教室の児童たちの手が一斉に上がった。

 入院生活の子どもたちへの絵本の読み聞かせボランティアを紹介した記事の切り抜きを手に「すごくよかった」と言う竹内源志郎君。同市都田小学校の稚アユの放流の記事に「僕たちと同じ四年生が生きものをすごく大切にしている」と話す柳原達朗君。

 江戸時代の国学者賀茂真淵を生んだ県居地区。同校では、優れた歌人でもあった真淵翁に学ぼうと、学校生活のさまざまな思いを児童が和歌に詠む習慣が身についている。

 発表を終え、最前列の鈴木サンシャインさんが即興で一首詠んだ。「やさしさは みんなの心が 温まる これからも 新聞読みたい やさしさ集めて」。その後ろの浅風萌さんもこう詠んだ。「やさしさは こたつみたいに 温まる やさしさの 記事を見つけて ほかほかと」

 チルチルとミチルが探した幸せの青い鳥。やさしさもきっと、子どもたちのすぐ隣にひょこっと隠れているに違いない。

(編集委員・八木義弘)

 

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