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静岡経済 特集

崩れた楼閣 検証 スルガ銀不正融資(中) 良識なき数字追求

◆ノルマ未達に罵声

シェアハウス向け融資を多く実行したスルガ銀行横浜東口支店が入るビル。支店の営業成績をたたえ、岡野光喜元会長が担当者をレストランに招いて「祝勝会」を開いたこともあったという=横浜市内で

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 「ノルマに達していないと、周りの行員が見ている前でボス(上司)に罵倒された。二時間ぐらい立たされたこともあった」。スルガ銀行(沼津市)の元行員の男性は、かつての職場の“日常”を告白する。

 借り手の返済能力や物件の収益力を過大に評価すれば、融資が焦げ付く恐れが強まり、ひいては自行の経営を脅かすのは明らかだ。なのに、なぜ行員たちは書類偽装などの不正に走ったり、見逃したりしたのか。

 第三者委員会の報告書によると、営業現場には「営業推進項目」として毎年、ローンの種類ごとに純増額の目標が割り振られた。数字は本社の担当部署が決めて伝達し、現場が意見する機会はなかった。「釣り堀に魚が十匹いないのに、十匹とってこいと言われる状況」。ある行員は第三者委の聞き取りにこう答え、その非現実さを指摘した。

 さらに、投資用不動産ローンを主に扱う部門のパーソナル・バンク(PB)では、数字を上乗せした独自の「ストレッチ目標」を設けていた。二〇一六年度の有担保ローンの例では、営業推進項目の目標が八百九十三億円に対し、ストレッチは千五百八億円と、実に一・七倍に上る。

 ストレッチ目標を達成するために毎月、店舗ごとの目標が設定され、各店で各行員に割り振られた。第三者委のアンケートで、PBなどで投資用不動産を新たに購入する人向けの「資産形成ローン」の営業をした経験がある行員三百四十三人のうち、「ノルマが厳しいと感じたことがある」と答えた行員は二百九十九人と、九割に近い。

 月末になると、各店舗で冒頭のような光景が繰り返された。「数字ができないならビルから飛び降りろ」「おまえの家族皆殺しにしてやる」。パワハラを超えて脅迫に当たるとしか思えない罵声も飛んだ。休職や退職に追い詰めた行員の数を上司が自慢し合う、異常な職場さえあったという。

 上司も例外ではない。目標に達しないと、支店長らを集めた会議の場で「今から営業してこい」と追い出されたり、担当の執行役員に「処遇はお任せします」と言わされたりした。

 半面、成績さえ上げれば見返りは大きかった。東京商工リサーチが邦銀九十一行を対象にした一八年三月期の給与調査によると、スルガ銀の平均年間給与は三井住友銀に次ぐ二位の八百万八千円で地銀トップだ。

 半期ごとに最大で基本給六カ月分、年間で最大十二カ月分にもなる賞与の存在が大きい。その評価の基準は、行員の場合、ノルマの達成率やカードローンの提案件数といった営業項目が最大で70%を占めていた。

 スルガ銀の社外取締役の一人は「新規融資の実行額ばかりに注目した評価が行われれば、明確な経営側のメッセージだと従業員は受け取ってしまう。何も考えずに従うことが良いと教育され、間違った行動をしてしまった」と省みる。

 過大なノルマと数字第一の評価基準。こうした企業風土を構築したのは、岡野光喜元会長(73)の弟で、一六年七月に亡くなるまで実質的に経営を担った喜之助元副社長だったと、第三者委は認定した。元副社長の狙いは、今となっては正確には分からない。ただ、行員の良識を置き去りにして一丸で数字を追い掛けた報いは、あまりにも大きい。

 

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