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静岡経済 特集

崩れた楼閣 検証 スルガ銀不正融資(上) 虚構の高収益モデル

 個人向けに特化して増収増益を続け、地方銀行の「勝ち組」とされたスルガ銀行で、シェアハウスなど投資用不動産ローンを巡る組織的不正が、弁護士でつくる第三者委員会の調査で明らかになった。好業績の裏で行われた不正の実態、行員の職業倫理をまひさせた企業風土、創業家である岡野家の責任を検証する。

◆競争激化 暴走招く

投資用不動産ローンを巡る数々の不正が明らかになったスルガ銀行の本店=沼津市で

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 3・62%。スルガ銀行(沼津市)が公表している二〇一六年度(一七年三月期)の貸出金利回りは、他の地方銀行が1%台前半に沈む中で際立つ。併せて六年連続で最高益を更新した地銀を、当時の金融庁トップは「特異なビジネスモデルで継続して高収益を上げている」とたたえた。

 「特異なモデル」に道筋を付けたのは、一九八五年に五代目頭取となった創業家出身の岡野光喜元会長(73)。有力地銀に東西を挟まれた地域で「小さな横浜銀、静岡銀になっても意味がない」と、法人から個人向けへと大胆に事業のかじを切った。新時代の銀行を掲げ、九八年にトップの名称を「頭取」から「社長」に変更。九九年に邦銀初のインターネット支店を開設するなどITを駆使した戦略を打ち出し、金融界の「風雲児」「異端児」と称された。

 当時の主力は住宅ローン。他の金融機関が二の足を踏む低所得者や外国人、単身女性といった顧客の専用商品を次々に開発した。第三者委員会の報告書によると、二〇〇三年当時、多くの銀行が一〜五種類だったのに対し、スルガ銀は二十六種類に上った。

 「当初は困っている客の役に立ちたいとの純粋な思いで開発したローンだった」(スルガ銀の有国三知男社長)。それを可能にしたのが、貸し倒れのリスクを見極める独自のノウハウだ。「この顧客層にはいくらまで貸せる」と、リスクに応じた高い金利を課すことで収益化に成功した。

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 しかし、個人向け融資に力を入れ始めた他行との間で次第に競争が激化。スルガ銀は〇八年ごろから、住宅ローンより高リスクだが利幅の大きい投資用不動産ローンへとのめり込んでいく。報告書によると、スルガ銀がシェアハウス向け融資を初めて実行したのは一一年十二月だった。

 借り手の資産や収入、物件の価格や賃料、入居率…。いつ始まったのか定かではないが、スルガ銀の融資の基準を満たし、より多く貸し付けるために、あらゆる偽装が行われた。多くは「チャネル」と呼ばれる不動産販売業者の工作だが、行員が指示したり黙認したりした証拠が、メールなどから多数見つかった。

 第三者委は、調査した一四年度以降だけで不正融資の疑いがある資料は七百九十五件に上るとしたが、総額は解明できなかった。報告書によると、一四年度に二千八百億円ほどだった投資用不動産ローンの実行額は、一五年度に約三千六百億円、一六年度は約三千八百億円へと急増。うちシェアハウス向けは三年間で千八百億円ほどとみられる。

 ある金融関係者は、日銀が一六年二月に導入したマイナス金利政策の影響もあるとみる。スルガ銀から3%超の高利で融資を受けた顧客に、他の金融機関が1〜2%での借り換えを勧誘。顧客を奪われたスルガ銀が「危ない橋を渡らなければならなくなった」(関係者)という見立てだ。

 借り手や物件の実力を無視した融資の結果、焦げ付きに備える貸倒引当金の積み増しで一七年度は八割以上の大幅減益となったスルガ銀。有国社長は「当初の志に立ち返り個人取引を推進したい」と語るが、信用が失墜し顧客離れが進む今、先行きは険しい。

 

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