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静岡経済 特集

坂本先生お薦め 大切にしたい会社3(6) 小野田産業(静岡市清水区)

◆命守る 信念の「箱舟」

シェルターの前で「津波などの災害から命を守りたい」と開発の思いを語る小野田良作社長=静岡市清水区で

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 駐車場に置かれた円筒形の小屋。鮮やかな黄色と緑色が目を引く。一見、遊具のようだが、津波が来た時には「箱舟」となって命を守る。

 水に浮く頑丈な「津波シェルター」。二・二メートル四方の大きさで一台分の駐車スペースに収まる。素材は難燃性の発泡スチロール。米軍でも使われているというポリウレア樹脂を全面に塗り、強度を増した。出入り口のドアのほか、天井には緊急用の脱出口を設け、横転時を想定して水抜き穴や換気口も付けた。

 室内は直径一・九メートル、高さ一・六メートル。中央のテーブルをぐるりと囲むように椅子が配置され、大人六人がゆったりと座れる。座面の下には寝袋や非常食を備えられる。

 近くに避難場所がない人、逃げるのが難しい子どもや高齢者のために開発した。小野田良作社長(62)は「普段から子どもの勉強部屋やカラオケルームとして使えて、いざというときも安全」と笑う。

大人6人が余裕を持って座れるシェルター=静岡市清水区で

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 一九四五年に小野田製材として創業。六五年から住宅建築を手掛ける。小野田社長は三代目。東海地震がいつ起きてもおかしくない、と言われ続ける地で「住む人の命を守ることが住宅メーカーの大命題」との信念を持ってきた。

 地震に強い家づくりに力を入れ、空気圧で家を浮かせて揺れないようにする装置や浄化槽としても使える貯水タンクを備えた「パーフェクトハウス」を開発。二〇一六年、国土強靱(きょうじん)化を目指して建設などの業界団体でつくるレジリエンスジャパン推進協議会の表彰で、企業部門の最高賞に選ばれた。

 「やってきたことが認められた」。勢いに乗って手掛けたのがシェルター。「地震にはパーフェクトでも、津波で流されたり、噴火で壊されたりしたら命を守れない」と同年末から構想に着手。最適な浮力や耐久力を調べる実験を繰り返し、空調を付けるなど快適に過ごせる工夫もして、今年五月に販売を始めた。

 試作や金型製作などで約三千五百万円を要したが、発売時のキャンペーン価格は九十九万八千円(税別)に抑えた。小野田社長は「軽自動車が買える値段にしようと、最初に『百万円』とテレビの取材で言ってしまった」と頭をかく。「でも、人を救いたいという思いに目覚めちゃったから。採算はどうでもいい」

 公園への設置を想定した新製品も開発し、「地域のさまざまな場所に置いてほしい。必要とされる限り製造を続ける」と小野田社長。駐車場に目をやりながら、「たとえ売れなかったとしても、三千五百万円で社員が助かるなら御の字」と朗らかに笑った。

(山田晃史)

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◆もうけ度外視 低価格で

 中小の注文住宅メーカーだが、独立独歩の経営をしており顧客の評価が高い。注目しているのは住宅そのものではなく、津波のシェルター。地震を中心とした災害に強い家づくりを続けてきたが、東日本大震災のように津波で家自体が流されては意味がないと開発した。住宅をつくる経営者として顧客の命と幸せを守ることを第一に考えており、価格は驚くほど安い。原価から計算したもうけありきの考え方ではなく、避難できない人の支払い能力で設定したからだ。もっと社会に出れば、災害時に多くの人の命が救われる。

 

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