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静岡経済 特集

坂本先生お薦め 大切にしたい会社3(5) もちひこ(静岡市清水区)

◆苦境の恩忘れず返す

テントハウスの模型を前に職場改善の取り組みなどを説明するもちひこの望月伸保社長=静岡市清水区で

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 丈夫なテント生地を支柱に張ったテントハウスの製造販売を手掛けて三十一年。短期間に、低コストで雨風をしのげる空間を確保できることから、資材置き場などとして重宝されてきた。近年はフットサル場やイベントスペースにも活用の幅が広がる。

 「職人中心の会社だったこともあり、社員の教育や勤務形態がきちっとしておらず、離職率がすごく高かった」。二代目の望月伸保社長(45)は、かつての会社を振り返る。

 一日の作業は工場長の腹一つで決まる。技術は先輩の仕事を見て、盗んで覚える。毎日、終業時刻が読めず、仕事も身に付きにくい。そんな職場を変えようと、二〇〇一年に社長に就くと、一日の作業計画を立てて従業員が共有するようにし、ベテランが技術を若手に教える場も設けた。

 残業は自主性を尊重する方式に変えた。稼ぎたければ、労働基準法の制限いっぱいまで働いても良く、個人の時間を大切にしたければ、気兼ねなく帰れるようにした。

 一方、社員旅行は海外へ。これまでにタイや中国、韓国などに出掛けた。「地方の名もない企業に就職してくれた従業員たちを、思い出に残る場所に連れて行きたい」と望月社長。パート、アルバイトを含め約五十人の従業員がいるが、「感覚的には五分の一ぐらい」に離職が減った。

テント生地の接着作業をする従業員=静岡市清水区で

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 従業員を大事にするのは、過去に会社が陥った窮地がきっかけだ。父親が社長時代の一九九四年、大口の納品先である商社から突然、取引を打ち切られた。

 新たな顧客を開拓する必要に迫られ、入社二年目だった望月社長は一日約五十社の飛び込み営業を重ねた。名刺を投げ返されたり、カタログをごみ箱に捨てられたりした。だが、「若造が頑張っているから、面倒みてやるか」と契約してくれる会社もあった。

 つらかった時期だけに、優しさが身に染みた。「苦境を乗り越えられたのは社員のおかげ。若い社員には、二度とあんな思いをさせたくない」

 望月社長は「あの時、良くしてくれた恩人たちと同じことをしていかなければ」と、地域貢献や環境対策にも力を入れる。十年ほど前から障害者の雇用を始めた。現在は一人がテント生地の縫製や裁断に携わる。「一緒に働くことで、従業員も作業の教え方や気配りを学び、人として成長できる」と力を込める。

 これまで廃棄していた年間数トンものテント生地の端材を活用して、三年前からバッグの製造も始めた。東京・新宿や渋谷の商業施設などで販売している。

 「安くて良い製品を作るのは企業として当たり前。その上で、社員を家族のように大切にし、地域からも必要とされる企業でありたい」。望月社長はさらに前を見据える。

(伊東浩一)

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◆社員守り結束力高まる

 テントハウスの製造販売と施工をしているが、大手にはかなわないので特注品を作っている。父親の代は下請けが中心で理不尽な要求もあったと聞く。今の社長に代わり、どん底のころは売上高が2割まで落ち込んだが、役員は貯金を切り崩して社員に給料を払い、ほとんど辞めさせなかった。その結果、結束力が高まった。首都圏や東海エリアに販路を広げ、シェアを着実に伸ばしている。特別支援学校からインターンシップ(就労体験)を受け入れるなど障害者の雇用にも力を入れている。

 

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