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静岡経済 特集

坂本先生お薦め 大切にしたい会社3(4) NPO法人トータルケアセンター(浜松市北区)

◆支え合い特製カレー

障害者たちがカレーを作る様子を見守る安間孝明理事長(中央左)=浜松市中区で

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 ライスと一緒に口に運ぶと、フルーティーな甘さが広がる。ひと息して、ほのかな辛さが心地よく舌を刺激する。豚もも肉の塊が、ほっぺたの内側でホロホロと崩れていく。

 浜松市中区幸四の「グレースカフェ」。定番メニューのグレースカレー(サラダ付き、税別七百円)はタマネギ、ショウガ、ニンニク、バナナ、リンゴといった具材を約四時間じっくりと煮込んだ英国風だ。使用するスパイスは三十種類に及ぶ。

 厨房(ちゅうぼう)での調理から客席への提供までを担うのは、さまざまな障害がある人たち。自立を支援するための就労の場の一つとして二〇〇七年に開設した。安間孝明理事長(60)は「皆で力を合わせて野菜を切ったり炒めたり。添加物も一切使わず、絶対にまねできない味」と自信を見せる。

 前身は、牧師でもある安間さんが開いていた聖書の勉強会。「知的、身体、精神…。どのような障害があっても、人はかけがえのない存在であり、当たり前のように働ける場所を作りたかった」と、行き場のない障害者を仲間と手弁当で受け入れ、革細工作りなどを開始。〇四年にNPO法人化した。

30種類ものスパイスを使ったこだわりのグレースカレー=浜松市中区で

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 北区三方原町に構えた工房で利用者が行う作業の一つが、天日で海水を蒸発させて作った塩の精製。イスラエルから輸入した塩に小さなごみが混じっていないか、スプーンですくって根気強く目で確認する。こしょうなど塩と混ぜるスパイスも扱うようになり、「メニューを作って売ろう」と、特製カレーの製造販売に乗り出した。

 現在は、八種類ほどのカレーをグレースカフェや北区初生町の「カレーガーデングレース」で提供する。市役所などでカレー弁当も販売し、すぐに売り切れる盛況ぶりだ。スパイシーなタンドリーチキンが、地元の医療関係者らに特に好評という。グレースカレーのレトルト版も昨年発売した。

 「注文が多い日は大変だけど、仕事ができる喜びを毎日感じる」と声を弾ませるのは、カフェで働いて一年半ほどになる市内の女性(32)。発達障害があり、今は親と暮らしているが、「いずれ一人になっても自立して生活していけるようになりたい」と前を向く。

 グレース(Grace)とは「神から与えられる良いもの」を意味する。安間さんは言う。「誰が欠けても事業は成り立たない。健常者も障害者も、支え合うことで社会は成り立っていることを体現したい」。人の力こそ恵みだと、信じてやまない。

(久下悠一郎)

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◆枠を超える障害者支援

 障害者の自立や就労支援が事業の柱で、理事長が私財を投じて取り組んでいる。物販や飲食店などで約80人が働いており、支援事業はNPO法人の枠をはるかに超え、社会福祉法人並みだ。笑顔で仕事をしている姿を見ると、私たちが「障害者にはできない」と決め付けて、チャンスを与えていないだけじゃないのかと痛感する。障害者の家族にとっても、なくてはならない「砦(とりで)」。本来なら資金力のある浜松の株式会社がやるべきだ。飲食店を利用したり、ここで育った人を雇用したりして、地域で支えることが大切だ。

 

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