トップ > 静岡 > 静岡けいざい > 特集 > 記事一覧 > 2018年の記事一覧 > 記事

ここから本文

静岡経済 特集

坂本先生お薦め 大切にしたい会社3(3) 山崎製作所(静岡市清水区)

◆職人の技 かんざしに

「社員の成長を見るのが一番の幸せ」という山崎かおり社長(左)=静岡市清水区で

写真

 切り絵のような花模様が、あでやかな光を放つ。板金加工が得意な町工場が手掛けるかんざしは、丈夫なステンレス製。「女性の頭に優しく収まり、傷にも強い」と山崎かおり社長(54)。髪に挿し込む「足」のしなやかな造形が、技術の高さを物語る。

 梅とウグイス、バラのブーケ…。ステンレスの薄板に一筆書きするように、レーザーでさまざまなデザインを切り抜き、工具を駆使して磨き上げる。特に注意を払うのは、「バリ」と呼ばれる鋭利な突起の除去。「人の体に触れるものなので大事な工程。目が良くないと作業はできない」と山崎社長。若手の男性職人四人が、週に六十〜八十本ほど製造する。

 総勢二十四人の会社がかんざし作りを始めたのは三年前。医療機器や工作機械の部品の製造を請け負っているが、消費者には見えにくい。「直接ほめてもらえる自社商品があれば、職人がやりがいを持てると考えた」。女性を中心としたチームを立ち上げ、インテリア関連を手始めに商品企画を開始。試行錯誤の末、軽くて展示会に出品しやすいかんざしにたどり着いた。

花の模様が特徴的なステンレス製のかんざし=静岡市清水区で

写真

 創業は高度経済成長期の一九六七年。山崎社長は二〇〇九年、父の後を継いで二代目に就任した。それまでは子育てをしながら経理を手伝う程度で「社長になるなんて考えてもみなかった」。契機は前年のリーマン・ショック。売り上げが半減し「そろそろ会社をやめようか」と切り出した父に、自身が社長になると説き伏せた。「熟練工や学校を出たての若者たちを、路頭に迷わせるわけにはいかなかった」

 就任して間もなく、心を痛めた瞬間がある。仕事についての社内アンケートで「言われた通りのことをやれば、それでいい」との回答を見つけた。「職人が仕事に誇りを持てなくなっている」。対話を重視し、自分の夢や会社の理想像をゲーム形式で考えていく研修を取り入れるなど、前向きに働くための社内改革に着手。「品質」「プライド」「絆」を柱とした経営理念は、社員全員で言葉を出し合って作った。

 かんざしのデザインは現在二十種類を超え、百貨店などが扱ってくれるように。日本商工会議所と全国観光土産品連盟が共催する一七年度の全国推奨観光土産品審査会で入賞も果たした。ただ、全体の売り上げに占める割合はまだ少ない。今後は、日本文化ブームを追い風に欧米やアジアへの販路開拓を図る。

 ブランド名は「三代目板金屋」。培った技を「次世代に引き継ぎたい」との思いを込めた。「社員の成長を見るのが一番の幸せ」と山崎社長。工場で汗を流す若い職人たちを、母親の目で見つめる。

(久下悠一郎)

人を大切にする経営学会 坂本光司会長 ここが「一押し」

◆女性の感性 雰囲気一新

 まちの小さな板金工場で、もとは大手に依存する典型的な会社だった。娘が社長になってから「量産ばかりを続けていてもだめだ」と、小ロット・高品質にこだわって全国に販路を拡大した。女性も入社し、かんざしやインテリアといった一般消費者向け商品もつくるようになった。板金の現場は男性社会のイメージが強いが、女性の感性を活用すべきだと思い知らされる事例だ。女性が増えて職場の雰囲気も明るくなった。女性経営者が急速に会社を変えてどう生きるのか、注目されている。

 

この記事を印刷する

中日新聞・北陸中日新聞・日刊県民福井 読者の方は中日新聞プラスで豊富な記事を読めます。

中日新聞しずおかの記事はこちら

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索