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静岡経済 特集

モノ語り ヤマハ発・VMAX 怒濤の加速感

◆デザインと技術が融合

VMAXの特徴を説明する元開発リーダーの荒木晤さん=磐田市新貝、ヤマハ発動機の企業ミュージアムで

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 「怒濤(どとう)の加速感」を技術と外観で実現し、ヤマハ発動機の至宝と呼ばれる存在になった。大型二輪モデル「VMAX」は、三十二年前に米国で発売した初代からデザインを大きく変えず、累計生産台数は全世界で十一万台を超えるロングセラーだ。モーターサイクル業界以外からも個性的なデザインが高評価を受けたが、今月、惜しまれながらも国内向けの生産を終えた。

■個性の塊

 VMAXの一番の特徴は、エンジンへの空気の取り入れ口「エアインテーク」だ。ハンドル下部にあり、大きく開いた口から空気が入り、エンジンに達してマフラーから吐き出される。吸気から排気までの一つの流れを見た瞬間に想像でき、デザインから速さを感じさせる。車体が低く、極太の後輪が特徴のクルーザーモデル、いわゆるアメリカンでは異質ながらも溶け込み、ヤマハ発を象徴するフラッグシップモデルになった。

■レースを意識

 開発が始まったのは一九八三(昭和五十八)年春。国内では、ホンダとの乱売競争「HY戦争」があり、米国では経済状況が不透明な時期だった。「厳しい時代を乗り越えるため、ヤマハ発らしい新しいクルーザーを世に出したかった」と、当時の開発リーダーで元上席執行役員の荒木晤(あきら)さん(71)は振り返る。

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 米国ではそのころ、直線での速さを競う一般人のストリートドラッグレースに興じるライダーが多かった。勝負よりも加速を楽しんでいることが多く、「直線での圧倒的な加速性を実現しようと決めた」(荒木さん)。

 クルーザーでは当たり前だった空冷Vツインエンジンといった概念を外れ、水冷V型四気筒のエンジンを採用。馬力を一四五馬力まで上げ、六千回転ほどで燃料量を増やすVブーストも搭載した。

 新しい試みに技術的な多くの壁が立ちはだかったが、開発チームを支えたのはデザインだった。荒木さんは「ジェット戦闘機をイメージしてエアインテークを備えた粘土の立体モデルを見た時、必ず商品化しようとチームがまとまった」と振り返る。

■熱狂的な人気

 八五年に米国で発売すると、右手でスロットルをひねるだけで瞬間移動するような加速を味わえることで熱狂的な支持を得た。翌年に欧州で発売し、フランスではファッションバイクとして人気に。発売が九〇年と遅かった日本にも、逆輸入で人気が飛び火した。九五年には、ニューヨークのグッゲンハイム美術館から歴代の名車の一台に選ばれた。

 二〇〇八年に二代目VMAXが誕生し、日本では〇九年から販売した。車両本体価格は二百二十万円(税別)。小型の新エンジンと電子制御を採用したものの、「怒濤の加速感」というコンセプトやエアインテークが特徴のスタイリングを引き継いだ。だが、環境規制対応によるコスト増などを理由に国内向けの生産は終了する。

 荒木さんは「シンボルとしての役割は十分果たしてくれた。よく頑張ったな」とシートをなで、VMAXに語り掛けた。

(山田晃史)

 

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