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静岡経済 特集

モノ語り ヤマハ・サイレントギター さらなる進化へ

サイレントギター生みの親の何木明男さん。理想の音を追い求め、さらなる進化に意欲を燃やしている=浜松市中区で

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 「音を出さない」という逆転の発想から生まれた。ヤマハの「サイレントシリーズ」は通常ヘッドホンをつけるため、周りにはほとんど音が漏れない。スタジオで、自宅で、旅先で。場所を選ばずに思う存分演奏したいという愛好家の心をつかんだ。トランペットやバイオリンもあるが、その名を世に広めたのは二〇〇一年に登場したギター。海外の評価も高く、累計販売本数は十五万本に達する。

■ボディーなし

 まず目を引くのは、シンプルで洗練されたルックスだ。音を共鳴させるボディーはなく、弦を張ったネックを中心としたスリムな構造。両サイドに曲線状のフレーム(側板)があるだけ。弦を弾いても周囲への音量は普通のギターの十分の一ほど。弦の振動を下駒(ブリッジ)にあるピックアップが感知し、電気信号に変換して音を生み出す。本体につないだヘッドホンを通せば、空気の振動を伴った「生ギター」の音色が聞こえる。

 リバーブ(残響)効果などを加えるエフェクトやチューナーも内蔵し、細やかに音質をコントロールできる。外部入力端子もあり、携帯音楽プレーヤーやスマートフォンと接続すれば、お気に入りの曲をバックに演奏できる。従来のギターにない楽しみ方ができる。

■「放浪」生かす

 開発者の何木(なにき)明男さん(63)が目指したのは「古典とモダンの融合」だった。入社以来、いくつもの部署を「放浪」した。学生時代から無類のクラシックギター好き。〇〇年の新商品プロデューサーの社内公募に手を挙げた。「『寄り道』で培った技術や経験もすべてつぎ込んだ」という。

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 初代のクラシックタイプ「SLG100N」のキャッチコピーは「夜に溶ける音。」。発表会でトップギタリストの渡辺香津美さんは「一億総ギタリスト時代にぴったりな商品」と絶賛した。

 翌年発売のフォークタイプ「SLG100S」のPRには、シンガー・ソングライターの中島みゆきさんを起用した。「静御前」ならぬ「静午前」に扮(ふん)し、平安期の十二単(じゅうにひとえ)をまとったポスターが話題をさらった。

 当初社内には懐疑的な見方も多かった。「年間三百本売れればいい」との下馬評を覆し、発売四カ月で八千本を売るヒット作に。自宅や夜間の練習用としての需要が多かった。

 やがて評判は海を渡る。ボディーがなくハウリングが起きないことから「ライブステージでも使い勝手が良い」と欧米の著名ギタリストらが支持し、知名度が高まった。

■まだまだ進化

 その後、フレームや指板の材質を変えたり、フィンガーレストを付けたりと改良を重ねる。一〇年には、エフェクトとして従来の二種類のリバーブにコーラスとエコーを加えた。一五年には、スタジオの高性能マイクで収録したかのような空気感豊かなサウンドを実現する独自の「SRTパワードピックアップシステム」を装着し、一段とユーザーの裾野が広がった。

 三月発売の最新モデル「SLG200NW」(希望小売価格七万八千円)もSRTを搭載。クラシックギターと同様の指板とネック形状を採用した。「これからも理想の音づくりを続けていく」と何木さん。飽くなき探求心で、さらなる進化に意欲をみせる。

(瀬戸勝之)

 

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