トップ > 静岡 > 静岡けいざい > 特集 > 記事一覧 > 2016年の記事一覧 > 記事

ここから本文

静岡経済 特集

やらまいか ヒット商品の作り方<6> 三輪バイク「トリシティ」

◆ヤマハ発 「わくわくするモノ作りたい」

三輪バイクの開発を担う海江田さん(右)と高野さん=磐田市新貝で

写真

 「このままではいけない」。二〇〇八年秋のリーマン・ショックに端を発した世界的な不況は、ヤマハ発動機を大きく揺さぶった。〇九年十二月期の連結決算が二十六年ぶりの赤字になり、希望退職の募集に踏み切った。

 「モーターサイクル、船外機、バギーの三本の柱で販売が落ち込んだ」。当時、社長職を代行していた木村隆昭・代表取締役常務執行役員は危機感をあらわにした。

 既存の事業を立て直すとともに、成長するにはどんな戦略が必要か。将来を担う二十〜三十代の若手社員らの声も取り入れようと、各部署から集めて専従チームをつくった。「固定観念を乗り越えよう」という発想から生まれたのが、新しいジャンルの乗り物の三輪バイク「トリシティ」だった。

 「どんな乗り物を作ってどの国で売るか、一から考えた」。一一年一月に発足した開発グループでリーダーを務めた海江田隆さん(48)=現・LMW開発部長=は振り返る。

 三輪に決めたのは、技術の土台があったことが大きかった。四十年前に前二輪のスクーターを試作するなど、歴代の社員がその可能性に着目してきた。「小回りの利く二輪の良さを保ちつつ、安定感のある三輪の良さを出そう」とコンセプトを固めた。

 第一弾は、排気量一二五ccにした。石畳の多い欧州には三輪が受け入れられる下地があり、広く需要を見込むことができた。人口減の進む国内では、二輪車に乗ったことのない若者を意識して開発を進めた。

 設計を担った高野和久さん(54)は、二十三年間にわたってロードレース世界選手権「モトGP」のマシンの開発を担当した経験を生かし、前輪と後輪にかかる重量の配分を設定した。カーブを曲がる際に前輪が連動して傾く独自の機構も取り入れた。

 「収益が改善し、将来の商品開発に経営資源を投入できるようになった」。一〇年三月に就任した柳弘之社長は昨年十二月、新中期経営計画(一六〜一八年)を発表した。国内外で進めた工場再編や新商品投入などにより、一五年十二月期の営業利益はリーマン・ショック前の水準にまで回復する見通しになった。

 トリシティは一四年に国内や海外で発売し、一年余りが経過した。「低速でも安定していて乗りやすい」と好評の声の一方、「二輪車との違いが分かりにくい」とも。「今のところ、反応はさまざま」と海江田さんは話す。

 新中期経営計画では「ひろがるモビリティの世界」を成長戦略の一つに位置づけ、二輪車のほかに多様な乗り物の開発に取り組む方針を打ち出した。四輪車事業への参入を表明し、一九年をめどに二人乗りの小型車を欧州で販売する計画だ。三輪バイクもさらに、ツーリングに適した大型機種の市場投入を予定する。

 「わくわくするようなモノを作りたい」(柳社長)。危機感の中ではぐくまれた種子が、少しずつ芽吹き始めている。

(西山輝一)

 =おわり

 

この記事を印刷する

中日新聞・北陸中日新聞・日刊県民福井 読者の方は中日新聞プラスで豊富な記事を読めます。

中日新聞しずおかの記事はこちら

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索