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静岡経済 特集

やらまいか ヒット商品の作り方<5> ボーカロイド

◆ヤマハ 「予期せぬ使い方で大ヒット」

「『歌によるコミュニケーション』の可能性を追求したい」と話す石川さん=浜松市中区のヤマハ本社で

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 人のような滑らかな声で、踊りながら歌うのは、コンピューターグラフィックス(CG)で描いた愛らしい「電子の歌姫」。インターネットの動画投稿サイトには、こんな仮想(バーチャル)アイドルのビデオがいっぱいある。熱狂的なファンも多く、コンサートも国内外で開かれている。新しい音楽文化を生み出したのが、ヤマハが二〇〇四年に発売した歌声合成ソフト「ボーカロイド(ボカロ)」だ。

 アマチュアのクリエーターらがパソコンで曲作りをする時は、それまでは高価な専門機器がないと人の声は制作できなかった。ボカロによって、容易にボーカル付きの楽曲が作れるようになった。

 狙う顧客層は当初は別だった。発明者の剣持秀紀(けんもちひでき)さん(48)=現ニューバリュー推進室長=らは、曲のイメージを歌手らに伝える際やバックコーラス用に使ってもらおうと考えていた。ただあまり普及しなかったため、相談したのが音源素材の豊富さで定評のあるソフト開発会社・クリプトン・フューチャー・メディア(札幌市)だ。「ボーカル用のキャラクター付きで売り出してみたら」との提言を受け、方向性が決まった。

 クリプトン社が〇七年に発売した美少女キャラソフト「初音ミク」が火を付けた。ボカロ2を使い、声優の声を基に作った。ネットのブロードバンド(高速大容量)環境の普及や折からの「萌(も)えキャラブーム」に乗り、若者らを中心に裾野が大きく広がった。

 ゲームやちなみ商品などを含む関連市場は年々拡大。初音ミクのようなキャラクターは今では六十種類を超え、一四年の年間カラオケランキング(ジョイサウンド)の十代の部門では、トップ二十曲のうち十一曲をボカロ曲が占めた。「予期しなかった『サブカルチャー』に使われたのが、大ヒットにつながった」(広報担当者)という。

 「人間らしい表現」と「操作性の向上」を目指した改良も続いている。一五年一月発売のボカロ4には、うなるような歌声を表現したり、音の強弱の変化を滑らかにしたりする機能を追加した。これを利用した演歌歌手・小林幸子さんの歌声ソフトは、本格的な歌いっぷりが本人からも絶賛された。

 ゲームを作る開発システム「ユニティ」にボカロの仕組みを取り入れた開発キットの提供も始めた。会場の盛り上がりや観客との掛け合いにより、歌姫が歌い方や表情を変える。こんな対話型ゲーム作りもできるようになった現在、ボカロはどんな方向に進んでいくのか。

 剣持さんから引き継いだボカロプロジェクトリーダーの石川克己さん(44)は人間らしさ追求する一方、別の方向性も指摘する。コンピューターが歌うという機能を、一般の生活の中に広く浸透させていくという構想だ。

 「天気予報や占いなどのスマホのアプリが歌に乗せて情報を伝えたり、ロボット家電が歌ったりしても楽しい。コンピューターと人の関係性を考える研究が盛んになる中、『歌によるコミュニケーション』がもっと注目される可能性がある」と期待する。

(瀬戸勝之)

 

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