トップ > 静岡 > 静岡けいざい > 特集 > 記事一覧 > 2015年の記事一覧 > 記事

ここから本文

静岡経済 特集

時代を超えて ツナ缶の物語<10> 中近東の富裕層 照準

  池上浩司社長

写真

 食品フロアの端から端まで、さまざまな銘柄のツナ缶がずらりと並ぶ。サウジアラビアの首都リヤドのスーパー。広大な売り場に米国やイタリアなどのラベルの商品が並ぶ中、メード・イン・ジャパンの白い缶詰がその一画を占める。

 その名も「GEISHA」(ゲイシャ)。現地を視察した池上浩司(54)は「日本から離れたこの国の食卓に、自分たちの作ったものが並んでいるんだ」と感じ入った。

 ゲイシャは、食品商社の川商フーズ(東京)が手がける缶詰のブランド。池上は興津食品(静岡市清水区)の社長で、川商フーズの提携工場として実際にツナ缶を作っている。

 ゲイシャ銘柄の缶詰は魚や果物などの種類があり、世界各地で販売。その中でツナ缶は主に中近東に輸出しており、原料はビンナガマグロやキハダ、カツオを使った各商品がある。

「GEISHA」ブランドのツナ缶。興津食品が製造を担う=静岡市清水区で

写真

 興津食品が製造を担うのはビンナガを使ったシリーズ最上級の商品で、ターゲットはサウジアラビアなどの富裕層。現地では気温が四〇度を超えることも多く、魚を状態良く保存できる缶詰の需要は大きい。

 「ビンナガはホワイトミートツナと呼ばれる。缶詰を開けると白い身が木の年輪のように詰まっており、見た目が美しい」と池上は語る。一本釣りの漁船が日本近海で釣ったビンナガを加工し、油は米ぬかから取った米油を使う。

    ◇

 かつては輸出で栄えた日本のツナ缶産業だが、近年は生産量の約98%が国内向けに作られている。残りが援助物資の缶詰を含む輸出用。その中で今も海外で市販されるツナ缶を製造しているのが興津食品だ。同社は戦前の創業当初から、ゲイシャ銘柄の缶詰の製造を担ってきた。

 ツナ缶の中身の形状には、ほぐしたフレークや固まりのソリッドなどの種類がある。かつてはソリッドが多かったが、細かい身をラインに流して缶に詰めるフレークは大量生産に適していて、国内ではこのタイプが主流だ。

 海外では今もソリッドタイプが好まれる。国内の各社がフレークを中心とするラインに切り替えたが、池上は「ソリッドの製造技術を昔から残してきたこともあって、輸出用のツナ缶を作るオンリーワンの会社になった」と話す。

    ◇

 海外で好評を得ている日本ブランド。とはいえ、興津食品の売上高に占める輸出用の割合は約一割で、メーンの売り上げは国内向けだ。大手ツナ缶メーカーの協力工場として、相手先ブランドによる生産(OEM)を続けている。

 人口減とともに国内のツナ缶の生産量は減る傾向にある。一方で、池上は「世界的には原料確保の競争が激しくなっている。品質を保ちつつ、生産効率を高める必要がある」と語る。国内の各メーカーが今、同じ課題に直面している。

 =文中敬称略

 

この記事を印刷する

中日新聞・北陸中日新聞・日刊県民福井 読者の方は中日新聞プラスで豊富な記事を読めます。

衆院選2017 静岡

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索