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静岡経済 インタビュー

トップは語る 県印章業協同組合 山本武理事長

◆はんこ、なくなるのでしょうか 節目で実力、不滅です

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 古代オリエントを起源に、悠久の歴史を持つ「はんこ」。日本では明治以降、一般に広く使われ、人生の節目で個人を証明する重要な役割を担ってきた。ところが、インターネットの普及とともに、届け出印なしで口座を開設できるメガバンクのスマートフォンアプリも登場し、いまや銀行業界を中心に「はんこレス」の動きが進んでいる。「はんこはなくなるのでしょうか?」。静岡県内の専門店でつくる県印章業協同組合トップの山本武理事長(50)=浜松市中区=に聞いた。

 携帯電話などの契約の時にも紙ではなくタブレット端末を使うことが増え、はんこを使う機会が少なくなっている。百円ショップの格安はんこもあり、印章彫刻技能士が作る専門店の経営は厳しい状態が続いている。県印章業協同組合の加盟店は二十年前の百五十店ほどが三十九店に減った。印章業界の状況を知ると、後継者も現れない。

 ただ、専門店の経営は厳しいが、はんこ自体は絶対になくならない。

■印章文化7000年

 売買契約や公的書類に使う印鑑だけでなく、書や絵画に押す趣味用も含めた広い意味の印章文化は、七千年前後の長い歴史がある。簡単には廃れない。はんこの始まりは古代オリエントの地で、つぼに粘土で封をして所有者を明記するために使い、動物の図柄などが好まれた。その後も各文明で文字が生まれる前にスタンプが作られていた。

 日本では福岡市の志賀島(しかのしま)で見つかった金印が始まり。奈良期に政権で使うようになり、江戸期には商人に、明治期から一般に広まった。押印文化は広く根付き、いまでは個人がはんこを使う世界でも珍しい国になった。使う場面が少なくなっても、判を押さないと書類や作品が完成した気持ちにならない人は多いと思う。

■国に守られてる面

 銀行が進めるはんこレスでは、使用が禁止されているわけではない。想像してほしいのは、病気で動けない時や利き手をけがした時。本人のみが有効な生体認証やサイン認証では、どう手続きするのか。はんこを登録しておけば、代理人に依頼できる。法人だと、膨大な量の決済を一枚一枚、直筆でサインするのは大変な作業になる。海外では、サイン用のスタンプがあるほどだ。

 書類作成では、記名と押印の両方を求める法律が多く、はんこは国に守られている側面もある。役所に提出する書類は印鑑が必要なものが多い。押印をなくすための法改正は膨大な数になり、現実的ではない。押印の役割を考えてほしい。印鑑を使う場面は、住宅や車の購入、結婚、離婚、遺産相続といった人生の節目。押印は最終的な意思確認で、合意に念を押す行為になる。少しでも迷っている人は判を押す直前に引き返せる。

■誤解を解く活動

 今後も押印の制度は選択制として残るけれど、「はんこは不便」と誤解して使わない人が多い。根強いはんこ文化の中では、持ち歩いていれば便利なものだと伝えたい。県技能士会連合会や県職業能力開発協会による教室で、児童生徒に印章の歴史から面白さ、はんこの作り方、役割を教える活動をしている。個人的にも商店による「浜松まちゼミ」で、はんこの役割を語り、誤解を解くように努めている。はんこを語れるのは専門店の武器になる。はんこの大切さを店から積極的に発信する活動が大切になる。

(山田晃史)

 やまもと・たけし 1967(昭和42)年、浜松中心部の有楽街に店を構える「はんの貫永堂」の長男として生まれる。私立興誠高校(現浜松学院高)卒業後、都内の印章店に入社。89年に父親が経営していた店へ戻り、4代目として現在に至る。印章彫刻技能士の資格を持つ。2012年から静岡県印章業協同組合理事長や全日本印章業協会静岡県地域統括者を務めている。

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