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静岡経済 ヒットの系譜

鳥居食品 トリイソース 

◆木おけで熟成 深い味

創業当時から熟成に使う木おけを前に、ソースの魅力を語る鳥居大資社長=浜松市中区相生町の鳥居食品で

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 野菜のうま味を凝縮した素朴でまろやかな味が人気の「トリイソース」。製造する鳥居食品(浜松市中区)は、一九二四(大正十三)年創業の老舗メーカーだ。販売先は県西部が中心で、浜松の“地ソース”として長く愛されている。

 工場の食堂や学校の給食向けの業務用ソースを製造してきた。一時期は原料に使う野菜の一部を粉末にするなど効率化も行ってきたが、二十五年ほど前に家庭用ソースの販売を始めたのを機に、製法を昔ながらの手作りに戻した。

 二〇〇四年に父親の後を継いだ三代目の鳥居大資(だいし)社長(42)は「安い食品はどんどん海外から入ってくる。日本でしか作れないこと、手作りでしかできないことを追求しないといけない」と、手間暇のかかる手作りを大事にする理由を説明する。

 こだわりの一つは原材料。野菜はすべて国産で、トマトやセロリ、ニンニクなど可能な限り地元産を使う。生のまま丸ごと煮込んだ上で、一度取り出し、粉砕してさらに煮込む。通常は煮汁だけを使うが、野菜を捨てずに丸ごと使うことで素朴な味になるという。

 原料の酢は三十年前から自社で製造。地元の酒蔵で吟醸酒を造る際に出る酒かすを使い、発酵作業では通常は熱風乾燥で一日で終わらせるところ、一カ月かけてじっくり乾燥させる。

 混ぜる香辛料も、通常は粉末状にするところ、同社では原形のまま漬け込む。とげとげしい味がなくなり、ソースになじむ風味になるという。

 最後に、創業当時から使っているという木のおけで一〜三カ月ほど熟成。鳥居社長は「木は呼吸しており、酸化が進んでまろやかになる。さらに長年使い続けているので味が染み込んでおり、味わいの深さが増す」と木おけの魅力を語る。

 定番のウスターや中濃のほか、オムライス専用ソースなどの新商品の開発も意欲的だ。現在、七種類のソースが、浜松商工会議所による浜松地域ブランド「やらまいか」に認定されている。

 一一年からは、「究極のソース」(七百二十ミリリットル)を限定発売。一本が四千円。昨年末は原材料をすべて半径五十キロで調達するというユニークな発想を実現させて話題を呼び、百本が完売した。

 鳥居社長は「ソースは甘味、酸味、塩味、苦味、うま味という味覚の五大要素を兼ね備えた調味料。需要が急拡大することはないが、市場からなくなることもない。新商品への挑戦と進化を続け、うちにしかできない味づくりを愚直に進めたい」と話す。

(矢野修平、写真も)

    ◇

 豊かな農産品や水に恵まれた静岡県から、多くの飲料や食品、調味料が生み出されてきた。これらの商品が、地元のほか国内外で親しまれている裏側には、独自性や良品に対する開発者の強いこだわりがある。地道にファンを増やし続けている商品のヒットの秘訣(ひけつ)を紹介する。

 

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