トップ > 静岡 > 静岡けいざい > ヒットの系譜 > 記事

ここから本文

静岡経済 ヒットの系譜

河合楽器製作所 電子ピアノ「PT200」

◆木の鍵盤にこだわり

初代電子ピアノ「PT200」

写真

 「最初から木にこだわったわけではない。本物のタッチを追い求めた結果が木だった」

 河合楽器製作所で三十余年。一貫して電子ピアノの開発に取り組んできた山口勉さんは、電子ピアノでは珍しい木製の鍵盤の「意味」を明かす。

 一九八五年の発売以来、同社は電子ピアノの上位機種に木製鍵盤を採用し続けている。

 その初代モデル「PT200」の鍵盤は、当時のピアノ(アコースティックピアノ)の部品をほぼ、流用したものだった。

 ピアノは、鍵盤を押すとアクション(打弦機構)が動き、ハンマーが弦をたたいて音を出す。複雑なからくりの動作が指先に伝わり、耳から入る音と合わさり、ピアノ特有の「タッチ」を生む。

 電子ピアノには弦がない。それでも、からくりの動きや弦をたたく感触、音の出るタイミングなどが同じでないと、弾き手は「ピアノ」とは認めない。

 「理想的な鍵盤の長さは。ハンマーに必要な加速度とは」。試行錯誤するうちに「ピアノのタッチを解析する測定機まで開発した」という山口さん。難題と格闘した日々を、振り返る。当初は木の扱いに悩まされた。木は水分を含むと膨らみ、乾くと反る。湿度が低いカナダで、鍵盤が変形して音を鳴らすスイッチが入らなくなる苦い経験もした。

歴代モデルに搭載した木製鍵盤と、開発担当の山口さん(右)、企画担当の鳥居さん(左)=浜松市中区で

写真

 開発のスタッフは、モデルチェンジのたびに改良を重ねた。ハンマーや、鍵盤を取り付けるシャシー(台座)を、木材から金属やプラスチックに変更。鍵盤も無垢(むく)材から、薄い板を張り合わせた積層材に変えた。

 いずれも、木の形状変化の影響を抑え込むための工夫だ。ライバルからは「木製といいながら、鉄や積層材を使っている」とささやかれもしたが、顧客は理解してくれた。

 商品企画担当の鳥居克彦さんは、「普段はグランドピアノを弾いている人が、自宅での練習用にカワイの電子ピアノを購入するケースが多い」と明かす。

 河合楽器は、アコースティックピアノのアクションにも、カーボンなどの新素材を積極的に採用している。伝統は守りながら、より良い音のためには思い切って変えるのが、河合のやり方なのだ。

 今年発売した最新モデルでは、鍵盤の長さがグランドピアノとほぼ同じになった。支点から端までの長さを確保することで、より軽い力で鍵盤を押せるようになり、連打性能が一段と向上した。もちろん、鍵盤の中身は木のままだ。

 「二百年前に製法が完成されたピアノに比べれば、研究の余地は多い」と山口さん。もっとグランドピアノのタッチに近づけたい−挑戦は続いている。

(林知孝、写真も)

 

この記事を印刷する

中日新聞・北陸中日新聞・日刊県民福井 読者の方は中日新聞プラスで豊富な記事を読めます。

中日新聞しずおかの記事はこちら

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索