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AIする未来 〜人工知能がつくる新聞〜

生体認証 「なりすまし」見極める

AIを使ったなりすまし検知について話す静岡大の大木哲史講師=浜松市中区の静岡大で

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 金髪の外国人青年が透明なフィルムに指紋を印刷し、白い接着剤を薄く塗布。乾いてから剥がすと、凹凸のある指紋が複製され、それをスマートフォンにあててロックを解除した。指紋認証をくぐり抜けられる様子を収めたユーチューブの動画だ。

 「グミやシリコーンでも指の代わりになるし、指紋は写真に写ったピースサインからでも読み取れる。生体認証はなりすましの危険がつきまとう」。静岡大情報学部の大木哲史講師(38)は、動画を紹介しながら険しい表情を見せた。

 なりすましの事件は各地で起きている。静岡県警は2010年、別人の指紋がついた特殊なテープを指に貼り、羽田空港の入国審査の指紋認証をすり抜けたなどとして、入管難民法違反の疑いで御殿場市内に不法滞在していた韓国人を逮捕した。11年には愛知や神奈川でも同様の事件が発生。入国管理局は入国審査で指紋のスキャナーにカメラを向けるなどの改善を迫られた。

 指紋や顔などの生体認証は、パスワードのように個人が記憶する必要がなく、ICカードのように紛失する恐れもないのが強みだ。しかし、大木講師は「生体認証の判別精度は100%ではない」と言う。

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 そこで、手のひら静脈を題材に、なりすまし検知の共同研究を約一年前から始めた。着目したのが人工知能(AI)。写真や動画といった限られた偽造物を想定している既存の検知方法と異なり、AIは偽造の特徴を覚えれば、幅広く対応できるからだという。

 スマホのカメラで数千人の手のひらを取り込み、「本物」とAIに教える。一方で、写真などを見せる場合は「偽物」と覚えさせ、AIが質感など本物と偽物の違いが分かるよう学習させた。手のひらに乗せたハムを本物と判別したりしたので、その度にプログラミングをし直した。「複数のサイトで同じパスワードを使う人は多いが、流出したら悪用されやすい。生体認証を普及させ、被害を減らしたい」と実用化を見据える。

 指紋認証はスマホなどで広範に利用され、顔認証はテーマパークの入場者管理などに使われている。スマホ用アプリに指紋や声でログインし、残高照会などができるサービスを始めた三井住友フィナンシャルグループのIT企業「ポラリファイ」の松山次郎開発部長は「生体認証は今後、IDやパスワードの代わりとなる。なりすまし検知など最新技術は生かしたい」と語る。

 大木講師の研究の原点は、子どものころに見たSF映画の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズ。指紋でタクシー料金を支払うなどの場面に、「夢の技術が実現できたら」とひかれた。「生活を身一つでできるようになったらすごくないですか」と、目を輝かせる。

 AIを活用したなりすまし検知の精度は、生体情報が多ければ多いほど高まるが、個人情報保護の壁があり容易ではない。異常なデータが入ったときにAIが予想外の行動を取り得るのも課題だ。でも、大木講師は「なりすまし検知の技術は手のひら静脈だけでなく、指紋や顔、声紋認証にも応用が利く」と意欲を見せ、AIとの共生の未来に期待を膨らませる。「人がAIの判断をうまくサポートしながら、便利な社会にできたら」

(古根村進然)

 

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