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AIする未来 〜人工知能がつくる新聞〜

農業 水やりの経験と勘学習

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 蒸し暑いビニールハウス内には、収穫時期を控えて黄色い花を付けたキュウリが実っていた。湖西市白須賀にあるハウス。先月半ば、静岡大情報学部の峰野博史准教授(43)と四人の男子学生は、キュウリに小型カメラを取り付けて汗をぬぐった。傍らで、農家の小池誠さん(37)が作業を見つめた。

 農業は単純な作業ではない。植物を育てるには、高度な知識と経験を必要とする。一方で、もっと効率化できる部分がある。三年前にエンジニアを経て就農した小池さんは、そう考えていた。実は峰野准教授と同じく静岡大出身。学んだ情報学を生かし、母の負担を減らそうと、独自に人工知能(AI)を使った仕分け機を作っていた。二人は昨年十一月に出会うと、すぐに意気投合した。

 協力して開発を目指すのは、水やりを助けるAIだ。素人目には分からない植物のほんのわずかな変化をカメラで捉える。手のひらサイズで箱型のセンサーもハウスに置き、温湿度や光量も同時に測る。熟練農家の経験と勘を、AIで再現しようとしている。

パソコンでトマト栽培のデータを基に説明する峰野博史准教授(右)とキュウリ農家の小池誠さん=湖西市白須賀の小池さんのビニールハウスで

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 峰野准教授が農業に出合ったのは、二〇一〇年ごろ。もともとの専門は通信システムで、農業の知識は全くなかった。書店で偶然手に取った本にヒントを得て、AIと農業という新分野への挑戦を決めた。

 最初は植物やその環境のデータが集まれば、熟練農家のようになれると甘く見ていた。だが、すぐに農業の奥深さを思い知る。農家は葉先のわずかな丸まりや、微妙な色の違いを見極めて水やりをしていた。さらに、そもそも高温多湿のハウス内では電子機器が次々と壊れた。現場に役立つものが作れない。悔しくて意地になった。

 逆にAIが水やりの量やタイミングを教えてくれれば、誰でもどこでも安定的に高品質な作物を作ることができる。水やりに費やしていた時間を、品質向上や販路拡大に使える。農業のビジネスとしての魅力が高まり、若者も参入しやすくなる。夢は膨らんだ。

 まず成功したのはトマト。昨年の七月、データを入力するだけで、水やりの指標となる茎の太さの変化をAIに予測させることを、世界で初めてできるようになった。数分おきに撮影した植物の画像を解析して、熟練の農家が感じている植物の微細な動きをコンピューターが検知できるようにした。さらにその画像や温湿度などと、茎の太さの関係をAIに学習させた。

 今後は小池さんの協力を得て、トマトで開発したAIをキュウリにも転用できるかを検証していく。「ゆくゆくは収穫量の制御まで可能なAIのシステムを作りたい。そして、高齢化が進み、担い手不足に悩む農業分野に貢献したい」

 人間とAIの共生について、峰野准教授はこう考える。「AIができることはAIに任せればいい。人間は人間にしかできないことに専念しよう。AIと持ちつ持たれつやっていけば、明るい未来が待っている」

(相沢紀衣)

 

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