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新春インタビュー 川勝平太知事

◆30歳でUターン推進

2018年の抱負を語る川勝平太知事=県庁で

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 川勝平太知事は中日新聞の新春インタビューに応じ、懸念されている若者の流出対策について、県を離れた若者が三十歳前後に静岡に戻れるための施策を展開することを明らかにした。リニア中央新幹線の工事で大井川の流量が減少する問題では「水の問題は譲れない」と強調。事業主のJR東海に対し、トンネル工事で発生する湧水の全量を大井川に戻すよう求めていくことをあらためて明言した。

◆人口流出・人手不足 若者が「生きる道」を 

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 −静岡県の人口が三百七十万人を切り、若者や女性の流出が続いている。若者流出対策など具体的な人口減少対策をうかがう。

 若者や女性を中心とした人口流出対策や、一・六倍近い有効求人倍率を受けた人手不足への対応を急いでいる。若者が「東京へ出たい。海外へ行きたい」という気持ちを止める必要はないと考える。ただ、ふるさとのことを知らないまま就職で離れる現状を知り、首都圏や中部、関西の大学十七校と「就職支援協定」を結び、学生の静岡での就職を支援している。

 それだけでは不十分とも感じている。三十歳前後まで、仕事では修業の時期であり、失敗が許される頃とも言える。その頃、女性は特に結婚を強く意識する。そこで「三十歳になったら静岡県」と呼び掛け、静岡に戻ってもらえるような施策を展開していきたい。

 人手不足に関しては業種によって、人余りと人手不足の乖離(かいり)が激しいと認識している。知事就任時(二〇〇九年七月)の有効求人倍率は〇・四倍程度で、仕事をつくることが課題だった。現在は選ばなければ仕事がある時代。事務職などは人余りで、介護や製造現場などでは人手不足が深刻だ。それをどうするかが課題だ。

 十四歳でプロになった藤井聡太四段はあの年で将棋を究める道に進んだ。将来ある十代の若者に技芸や実学を奨励したい。農業、工業、商業高校を普通高校と対等以上に重視する。静岡の強みはものづくり。十代のうちから「生きる道を見つける」という教育を社会全体で応援したい。

◆大地震・津波対策  減災 全国のモデルに

 −国の中央防災会議が地震予知を前提とした防災対応の見直しを決めた。県は南海トラフ巨大地震の犠牲者八割減に取り組んでいるが、国の方針転換を受けて県の取り組みを見直す必要はないか。

 静岡県は東海地震説が出てから四十年間、二兆三千億円ぐらいかけて対策してきた。静岡に地震が来ると言われたのに、三陸沖で東日本大震災が起きた。阪神大震災も熊本地震も全部予測不可能だった。県が予知型から突発型の訓練に変えて久しい。私が知事になってからは、突発型を前提に対策している。

 −津波対策は。

 宮城県は万里の長城のように、高さが最大十数メートルのコンクリートの壁を数百キロにわたって造っている。人を守るためだ、結果的にこれで助かると言うが、どんどん出来上がってきて、地元から「こんなものを造られたら困る」と反発が出ている。解決不可能な問題を、結果的に大きな費用を使ってやっている。

 静岡県はどうか。沿岸部は五百五キロあり、二十一市町が海に面している。津波が来たら高台に逃げるしかない。波にのまれないためには防潮堤しかないが、まちの人たちは防潮堤は嫌だと言う。伊豆の人たちは、海岸に高い塀ができるとアイデンティティーがなくなると話す。避難路や避難先の整備をやるならいいと言うので、整備を進めることにした。

 民間から三百億円の寄付があった浜松の防潮堤は、セメントと砂を混ぜた工法で造り、その上は植栽をして、平時にはハイキングできるようにする。徹底して地元や利害関係者らと話をして、それぞれに合わせた形にする。これを「静岡方式」と呼んでいる。

 −南海トラフ巨大地震対策では、静岡県が全国のモデル地区に選ばれた。

 四十年間、人の命を守るためにやってきたので、災害に対応する能力が相対的に高い。静岡県でやっていることをどのように国がモデル化するかだと思っている。地震が起きることを前提に、防災、減災をしないといけない。

 静岡県では内陸に企業を呼び込み、沿岸都市部の安全性を向上させる「内陸のフロンティア」の取り組みを進めている。浜松の野球場もその一つ。浜松には十五メートルの津波が来ると言われているが、防潮堤の高さは十三メートル。二メートル越波する。津波から逃げる高い場所がないといけない。アルプススタンドを造って球場に水が入らないようにすれば、救援物資も置ける。これが沿岸部のリノベーションだ。

 内陸フロンティアや静岡方式は、国からも高く評価されている。確度の高い地震予測はできないことを前提にした大規模地震対策特別措置法(大震法)の見直しについては、準備はしてきた。

 <県内の防潮堤整備状況> 南海トラフ巨大地震などにより最大33メートルの津波襲来が想定される静岡県は、沿岸部505.6キロのうち、周辺に人家や工場などがある290.8キロを防護が必要な区域とし、対策を進めている。ただ、100〜150年に1度起きるとされる「レベル1津波」に対し十分な高さを確保済みの区間は2016年度末時点で6割(169.3キロ)にとどまり、観光や景観への影響が大きい伊豆半島を中心に、防潮堤の整備を軸とした津波対策を見直す自治体が増えている。

◆浜岡原発 再稼働はできない

 −運転停止中の浜岡原発について、六月の県知事選で三選後、任期中の四年間は動かさないと宣言した。考えに変わりはないか。

 動かせないでしょう。使用済み核燃料の持って行く場がない。再稼働は現実的に状況が整っていない。

 −地元同意についてどう考えるか。知事には法的に再稼働を止める権限は無い。

 鹿児島県の例で言えば、九州電力川内原発の再稼働反対を訴えた人が知事になったが、原発は動いてしまった。実際、決めることができるのは私ではないということ。ただ、県と中電の信頼関係は大事だ。

◆リニア・空港新駅 水量減少は死活問題

 −リニア中央新幹線の工事では、大井川の流量が減少する。事業主のJR東海とどう交渉していくのか。東海道新幹線の静岡空港への新駅を交渉材料とする考えはあるか。

 大井川の流域には七十万人の県民が生活していて、飲み水のほか農業用水、水力発電など産業用として活用されており、水量減少は死活問題だ。ルートの変更は可能だが、大井川は代替が効かない。当初は水の問題を深く認識していなかったが、現場を歩くにつれて認識が現状に追い付いた。

 二〇一一年五月、リニアのルートが、静岡を通って南アルプスを貫く直線ルートに決まった。決定まで静岡を通るという話は誰も知らなかった。私はリニア推進論者だ。トンネル掘削で発生する土砂置き場の候補をJR東海に紹介したくらいだ。ただ、水の問題は譲れない。

 静岡空港の新駅について、東京五輪・パラリンピックの開催もあり、たくさん来る訪日外国人を首都圏の空港だけでは受け入れきれない。静岡空港は首都圏の補完空港の役割も持つ。

 長野と岐阜にまたがる御嶽山が一四年に噴火した。富士山が噴火した場合、羽田や成田が使用できない恐れがある。静岡空港は降灰の影響を受けず、大規模な広域防災拠点だ。増える訪日観光客や防災の観点からも静岡空港に駅がないといけない。

 新駅設置は利益誘導ではない。日本のために必要で、取引の材料ではない。

◆憲法改正 天皇、9条 議論不十分

 −憲法改正についてどう考えるか。

 憲法についての議論はまだ不十分だ。大事なのは元首論。今の政権には、象徴天皇の顔に泥を塗るようなことをする人たちがいる。元首とは明治天皇のこと。自民党の中に「天皇は神聖にして侵すべからず、陸海空を統制する」という元首に戻せと言う人がいる。昭和天皇は自ら「現人神(あらひとがみ)ではありません」と人間宣言し、象徴天皇になられた。今上陛下はそれを受け継いでいる。

 天皇はある時点から靖国神社を参拝されていない。天皇のために死んだ人のための神社には行かれない。サイパン、パラオなどに行き、敵味方関係なしに慰霊される。象徴的行為としてなさっておられる。それと反することを、今の安倍政権の方たちはやろうとしている。

 −憲法九条については。

 今は改正できる状況が整っているが、その前提の議論はもっとしないといけない。九条に自衛隊を入れることについては、日米安全保障条約と憲法、どちらが大事かを議論する必要がある。

 安保条約の前文は、集団的自衛権と個別的自衛権の両方を認める国連憲章をベースにしている。一方、憲法は集団的自衛権を認めていない。先に成立した国連憲章を踏まえた上で、国際紛争を処理する手段として、先んじた武力行使はしない、陸海空軍を持たないと言っている。自衛隊があるのは当たり前と言う前に、対外的な条約と憲法のどちらが大事かを議論する必要がある。

 −地方自治は。

 地方自治について記されている第八章は魂が入っていない。九二条にある「地方自治の本旨」はどこにも書いていない。九四条は、条例は作っていいけど法律の中でやれ、と。大蔵省(現財務省)と自治省(現総務省)は、旧明治体制のまま残っている。地方自治と言いながら、中央政府の役人が主導する自治だ。地方自治を考えていないに等しいものが書かれている。

(聞き手=編集局長・鈴木孝昌)

 

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