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長浜の山口さんに林野庁長官賞 谷口杉を守り続けて40年

谷口杉の保存に努め、林野庁長官賞を受けた山口さん=長浜市谷口町で

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 江戸時代、幕府が山を保護していた長浜市谷口町で、「谷口杉」と呼ばれる自生のスギを守り続けている地元の山口通雄さん(83)が、全国育樹活動コンクールの林野庁長官賞を受けた。挿し木で育てた苗を約40年にわたって植え続け、種の保存に取り組んできた。

 世話するのは、タロウエモンスギと呼ばれる品種。谷口町に自生するスギの中から良木を選んで挿し木で増やし、二百年ほど前に品種が定まったとされる。

 通常のスギよりも枝が細く垂れ下がっているため、雪の重みに強いのが特長。赤みがかった細かい木目は建材として評価が高く、かつては酒だるや舟にも使われたらしい。最近は住宅様式の変化で、立派な谷口杉が流通する機会は少なくなっている。

 伊吹山系に囲まれた盆地に位置する谷口町は江戸時代、幕府直轄の「天領」として厳しく入山が制限された。その名残もあり、必要な分だけ木を切り、その跡に自ら育てた苗木を植える「択伐」が古くからほそぼそと行われてきた。

 「一本切ったら三本植えろ」と先輩から教わってきた山口さんも、その伝統を踏襲する。挿し木用の苗は良質のタロウエモンスギを見極め、枝を三十センチほど切って採取。プランターで根を張らせた後、畑に移し替えて二年ほど世話をし、高さ一メートルに育った苗木を山に移植する。

 子どものころから父に山の管理を任され、タロウエモンスギの植林は会社勤めをしていた一九七七(昭和五十二)年ごろに始めた。現在は年間五十〜百本の苗を植え、山全体で三千本を管理する。苗の生産から木の世話まで一貫して担うのは地元でただ一人という。

 山口さんは「建材に使うには八十〜百年かかり、私が生きている間に経済的な見返りはない。それでも、代々伝わるスギを残したいという思いでやってきた」と話す。間伐材や倒木を除き、これまでに植えた木を使ったことは一度もない。

 林野庁長官賞は農林水産大臣賞に次ぐ賞で、全国では山口さんを含めて四の個人・団体が受賞した。山口さんは「支えてくれた森林組合や行政職員、林業仲間のおかげ」と感謝し、「谷口杉は他の地域にはないスギ。広く素晴らしさを知ってもらい、長い目で見て地域のためになればうれしい」と話している。

 (渡辺大地)

 

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