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角川春樹小説賞「童の神」刊行 大津在住の今村翔吾さん執筆

新刊「童の神」を手にする今村さん=栗東市内で

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 大津市在住の歴史小説家今村翔吾さん(34)の小説「童(わらべ)の神」が、五月に角川春樹小説賞を受賞し、十月二日に角川春樹事務所から出版された。平安時代を舞台に、差別されていた地方の民と朝廷との対立を描いた作品で、出版業界や関係者からは「直木賞にも」と期待する声が上がっている。

 今村さんは京都府出身でダンスインストラクターから転身し、守山市の埋蔵文化財センターの職員として今年二月まで働いていた。平安時代の地方の民は朝廷から差別を受けており「童」という言葉が「奴隷」の意味で使われていたという。これに興味を引かれ、今回の作品を執筆した。

 今村さんは「日本は統一民族国家と思われているが、昔から民族間の対立があり、差別もあった。現在の移民問題などにつながる部分があったと思う」と、現代の社会問題と歴史のつながりを指摘する。

 作中には鬼や大蛇、土蜘蛛(ぐも)などと呼ばれる地方の民が多数登場。これらは日本各地に残る妖怪やお化けなどの伝承の正体だという。今村さんは「討伐された地方の民が、朝廷の手によって脚色されているものだろう」と分析。こうした史実とフィクションを織り交ぜた要素も、作品を盛り上げるポイントとなっている。

 今村さんは執筆に当たり、資料を読み込むだけでなく、作中の舞台となる場所に実際に足を運んだ。県内で「近江富士」と呼ばれる三上山も訪れ、距離感をつかんだり、地域住民から話を聞いて、その土地に残る伝承を聴き取った。

 今村さんは歴史小説家として活動していく中で、滋賀を「歴史ネタの宝庫」と気に入っているという。さらに「近江商人の町だからか、いろんな人が分け隔てなく話し掛けてくれる」と県への愛着も見せた。

 今村さんは「差別などの問題について、物語の中に何か答えがある訳でない。ただ、読んでもらって、そういった問題を考えるきっかけに、少しでもなってくれればいい」と作品に込めた思いを語った。

 千六百円(税抜き)で、各書店で注文できる。今年下半期の直木賞の候補は、年内に発表される予定。

 (柳昂介)

 

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