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「カメラを止めるな!」監督に聞く 木之本出身・上田慎一郎さん

「挑戦して生きたほうが人生楽しくなるよ」と話す上田監督=彦根市内で

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 長浜市木之本町出身の映画監督、上田慎一郎さん(34)の劇場用長編デビュー作「カメラを止めるな!」が大ヒットを記録している。彦根市の彦根ビバシティシネマで8月31日に始まった“凱旋(がいせん)上映”に合わせ、映画製作のきっかけや少年時代について聞いた。

 (聞き手・渡辺大地)

 −映画がヒット。低予算の作品が映画界に大きな衝撃を与えています。

 日に日にコトが大きくなって、喜びをかみしめている暇がありません。受け入れられている要因の一つに映画が「時代の空気のカウンター(対抗)」になっている部分があるかもしれません。メジャーの映画は漫画が原作とか、スター俳優をたくさん起用するとか、内容もどっちかっていうと「泣き」が強い。「カメラを止めるな!」はすべて真逆。無名の俳優を起用し、低予算だからこそできた映画。メジャーにはできない戦い方をして道があることを証明でき、自信になりました。

 −映画監督を志したきっかけは?

 中学一年の時、国語の授業で班ごとに演劇をすることになった。僕の班は桃太郎とか既存の物語ではなく、僕が脚本を書いてオリジナルの演劇をした。先生が面白いと言ってくれ、全校生徒の前でやることになり、学年全体でキャスティングと稽古をし直した。初めての監督業でした。

 それと、木之本には映画館がないけど、友達のお父さんが映画のビデオをたくさん持っていて、借りて見るうちに好きになった。おやじにハンディカム(携帯ビデオカメラ)を買ってもらい、放課後に映像やコントを撮った。追いかけ合ったり、銃で撃ち合ったり。他愛のないものを撮っているうちに、ものづくりが楽しくなって。高校時代は文化祭の出し物で三年間、映画を撮りました。転校するクラスのマドンナをめぐる青春群像劇とか、高校生四人が戦争時代にタイムスリップするアクションとか。

 −高校二年の時、手作りいかだで琵琶湖を横断しようとした逸話は有名。

映画「カメラを止めるな!」の一場面=(C)ENBUゼミナール

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 映画に限らず、とにかく面白いことをするのが好きだった。八人で計画を企てて、僕も含めて三人が乗った。でっかいことをしてやろうと。湖西から長浜方面に横断し始めたけど、夕方になると波が強くなって前に進まなくなって。いかだも壊れていくし。死ぬって感じになって。最後は力をふりしぼって、いかだをビート板代わりに岸まで泳いで助かりました。事件でした。

 −卒業後は?

 高校の三年間、映画を作り、所属していた演劇部では近畿地方の大会で二位になった。それが評価され、ある大学から入学の誘いもあったんです。成功体験が積み重なって、おれは天才かと思った。国内に収まっている場合じゃない、ハリウッドに行こうと。それで大阪の英語の専門学校に行ったけど、なじめなくて数カ月でやめました。

 二十歳くらいで上京し、ふらふらしてました。怪しいビジネスにだまされて二百万円ほど借金したり、代々木公園でホームレスをしたり。映画以外のところで失敗を重ねて、二十四歳くらいまでは映画は作っていませんでした。

 −生い立ちが映画づくりに生かされている点は。

 「カメラを止めるな!」はいろんな挑戦がある。最初の三十七分がワンカットで、スタッフもほとんどが三十代。周りからはやめとけと言われたけど、やった。その感覚は、琵琶湖を手作りいかだで渡った時と同じ。無根拠な自信。不可能と言われると燃える。いつも挑戦していて、それは当時も今も変わりません。

 −木之本を舞台に撮ってほしいという声も多い。

 いつかは撮りたい。木之本って歴史が豊かな雰囲気があるけど、ギャップがあることをぶつけてみたい。例えば、宇宙人が襲来してまちを壊滅させようとする一大スペクタクルとか、スパイ映画とか。

 −最後に夢を追う若者たちにメッセージを。

 僕は映画撮影を再開する二十四歳までに、あらゆる失敗をした。若いうちはうまく世渡りをして成功しようとするんじゃなくて、どれだけ失敗を集められるかが大事。挑戦して生きたほうが人生楽しくなるよ。

 <うえだ・しんいちろう> 木之本中時代から動画を制作し、長浜高卒業後も独学で映画を学ぶ。2010年、映画製作団体「PANPOKOPINA」を東京で結成。これまでに短編を中心に7本で監督を務め、国内外の映画祭で20のグランプリを含め、46もの賞を獲得した。主な監督作品に「お米とおっぱい。」(11年)、「ハートにコブラツイスト」(13年)など。東京在住。

 <カメラを止めるな!> ゾンビ映画の撮影隊に本物のゾンビが襲いかかるところから始まる。緻密な脚本や笑いあり、涙ありの予想外の展開が話題となり、6月に東京の2館で公開後、上映館は累計240カ所以上に拡大。観客動員は100万人を突破した。製作費は300万円。監督・俳優養成スクール「ENBUゼミナール」のプロジェクトで2017年に製作し、俳優はオーディションで選んだ。上映時間は96分。

 

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