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待機児童、かすむ訴え 保育所6カ所落選の母

2017年4月18日 紙面から

 名古屋市中区のパート女性(40)は今月、長男(3つ)を保育所に預けることができなかった。第六希望まで挙げて市に申し込んだが、すべて落選。「まるで宝くじみたい」。こうした「隠れ待機児童」は同市内で五百八十五人(昨年四月時点)。二十三日投開票の市長選で有力二候補はいずれも待機児童対策を公約に掲げるが、名古屋城天守閣の木造復元や市民税減税を巡る論戦が中心で、その訴えはかすんでいる。

 正規雇用の母親などがパートより優先されるため、女性は自宅か職場に近い六カ所に落選。市は代わりに、空きのある別の保育所を紹介した。だが自宅からやや遠く、職場と方向が違う。時給九百円の事務仕事のほか、自宅でデータ集計の仕事もしているが、収入は月三万円の時も。自動車を持たず、自転車で通えない距離のため、地下鉄などの交通費と保育料を考えると、赤字になりかねない。

 将来の両親の介護や子の進学などに充てる資金に不安がある。子ども手当に手を付けず、生活費を節約してためた五百万円が生命線だ。「これ以上、貯金は削れない」。入所を断念せざるをえなかった。

 今は週三回、一日六時間ずつ、近くの一時預かり施設を利用する。このため勤務時間を延ばせないから、目標の収入(月十万円)は遠い。

 三人家族で、鋳造会社で働く夫(45)は労災事故で指を複雑骨折した上、長時間労働で体調を崩し、会社を休みがち。収入も不安定で、女性は「自分の収入が増えれば、すぐ夫に『辞めていいよ』と言ってあげられるのに」。

 市長選で現職の河村たかしさん(68)は、演説で「名古屋は欲を言わなければ、全員、保育園に入れます」と述べ、昨年まで三年連続で待機児童ゼロ(四月一日時点)を達成した実績を強調。前副市長で新人の岩城正光(まさてる)さん(62)は、駅前からの園児送迎サービスによる利便性向上を掲げている。だがどちらも有権者の前で訴える場面は少なく、大きな争点とはなっていない。

 マンション建設による若い世代の流入などで、都心部の「保活」競争は特に激しいが、園の整備は進んでいない。それでも女性は、あきらめきれない。「安心して働けるように、ママたちの声にもっと耳を傾けて」

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