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<対決の構図>(下) 新風と烈風 吹くのは

2017年2月25日 紙面から

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 「市役所はトップダウンに振り回され、職員が疲弊しきっている。やりがいを持てる環境をつくり、成果を出すのがトップの役割だ」

 一月中旬、名古屋市内で開かれた弁護士らの勉強会。すでに出馬を表明していた前副市長の岩城正光(まさてる)(62)は、市長の河村たかし(68)の下で働いた三年を振り返り、市政刷新の思いを訴えた。

 児童虐待問題を専門に弁護士活動をしていた岩城の携帯に、河村の気さくな声が響いたのは二〇一三年四月。「副市長になってくれんか」。子どもや高齢者など、福祉施策の充実にうってつけと目が留まったのか。岩城は唐突な要請に面食らったが、型破りな発想力に共感するところもあり、快く応じた。

 ほどなくして、抱いていた印象は覆された。「思い付き」で施策の立案や具体化を求め、振り回される職員。進まなければ「役人が言うこと聞かん」「役人は市長より議員を向いとる」。そんな恨み節を幾度も耳にした。

 弁護士時代、一人で仕事を切り回すことが多かった岩城は、チームで積み上げる行政の仕事にやりがいを感じていた。区役所や学校現場を足しげく回り、職員と膝をつき合わせた。市内で三番目の児童相談所の開設や、子どもの貧困解決のための学習支援の充実などに力を合わせた。

 だから「社長」が「社員」を「税金で食って、楽しとる」と公言し、士気を下げるだけのやり方に違和感を覚えた。以前にも、ブレーンに起用した大学教授や、身内の減税日本の市議までも「意見に耳を貸さず、問題解決に自ら動かない」と、たもとを分かっていった。

 岩城にとって、そんな市政はまさに「刷新」の対象。思いに駆られた末の出馬だが、市民にどれほど伝わるのか。

 「レッツ・メーク・ナゴヤ・グレート・アゲイン!(名古屋をまた、偉大にしよまい)」−。

 二十二日の市議会で出馬表明後、街頭演説のため名古屋・大須の商店街に繰り出した河村は、米大統領のドナルド・トランプのせりふをもじり、聴衆の笑いを誘った。最近は、トランプ風の赤いネクタイがお気に入り。減税政策や産業振興を挙げ「トランプさんと根源は同じです」と共通項をアピールする。

 重ねるのは「既得権益の打破」。そのために、抵抗勢力を浮き出させる。負けずに闘う姿を見せ、市民の支持を集める劇場型の政治手法。

 頓挫したものの、看板公約の「市議報酬半減」や、既存の自治組織に対抗しようとした「地域委員会」は、その典型。市民税減税も、財源は市職員の給与カットなどで生み出した。

 選挙はめっぽう強い。だから行き詰まった政策は、有権者に「信を問う」ことで打開を図る。職員や議員を味方に、折り合いを付けようとはしない。側近の市議は「市民に人気がありながら、見合った実績を残せていないのがもったいない」と残念がる。

 再び市議報酬半減や、進まぬ名古屋城の天守閣木造などを公約に掲げようとする河村。すでにその後を見据え、再度のリコールを含めた議会との対決も、周囲にほのめかす。局長クラスの一人は「関心がない施策は口出しもないので、ある意味、やりやすい。ただ、議会との対決に明け暮れたり、国の政局に気を取られたり、地に足がついていない市政運営はもう勘弁」。

 投票まで五十七日。百八十七万有権者に届くのは、河村が言う「二期八年間、市民がよかったか」なのか、岩城が唱える「現市政の刷新」か。=文中敬称略(この連載は、安田功、蜘手美鶴が担当しました)

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