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対決の構図(上) 遠のく解散、続投へ舵

2017年2月23日 紙面から

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 「秋まで解散は、にゃあな」。一月二十九日、日曜の昼下がり。政務で上京していた河村たかし(68)は、東京都内のホテルのラウンジで焼酎の水割りのグラスをあおり、自らに言い含めるようつぶやいた。

 この朝、東京都知事の小池百合子が支援する千代田区長選の候補を応援し、旧知の区議らと顔を合わせた。解散風がすっかり遠のき、夏の都議選に向けた小池新党結成の動きで盛り上がる空気を肌で感じたのか。国政復帰との間で揺れた末、市政続投に向けて舵(かじ)を切った。同席した側近市議は、そう受け止めた。

 「庶民革命」の理想を掲げ、「何かを変えてくれる」との漠とした期待を背に、市政の舞台に華々しく登場して八年。看板公約の実現に意欲をみせながら、今も続くのは5%の市民税減税だけ。地域委員会は試行段階で頓挫、半減していた市議報酬は昨年四月に増額された。追い打ちを掛けるよう、教育長や副市長の人事すら思い通りにいかず。最も心を砕く名古屋城天守閣の木造復元も、足踏み状態だ。

 「酒飲まなやっとれん」。なじみのぼやきに加え、昨春ごろから、市政運営の限界も口にする。「議会で過半数取れにゃ、改革は進まん」「納税者のための政治を実現するには、国を変えんといかん」

 そのころ、目を向けた先が、全国ニュースで脚光を浴びる東京や大阪の改革勢力だった。「身を切る改革」の方向が一致するおおさか維新の会(現日本維新の会)と昨夏の参院選で共闘し、敗れたものの愛知選挙区で候補者を共同で公認。旧日本新党結成時の「一年一組の同級生」と親しみを込める小池が東京都知事に就任すると、政治塾を通じた連携を仕掛けた。

 「総理を狙う男」をキャッチフレーズに、衆院議員を五期十六年務めた河村。昨秋以降、解散総選挙を巡る観測が流れるたびに政界再編を思い描き、胸中は揺れた。

 支援者らとの会合で「今もまだ、あきらめたわけじゃない」と繰り返し、実際、周囲に「いつでも動けるように」と後継者探しを指示した。公務を終えると、たびたび新幹線に飛び乗り、都内で懇意の国会議員や小池側近らと酒を酌み交わした。昨年末、たもとを分かった前副市長の岩城正光(まさてる)(62)が機先を制して出馬表明しても動じることはなかった。

 しかし、年が明け、駆け巡った解散情報はことごとく立ち消えに。施政方針を込める新年度予算の編成作業で「まだまだ、やることがある」と気を奮い立たせ、続投を目指す道を選んだ。

 「日本一子どもを応援する名古屋にするため、ご奉公したい」。二十二日に開会した市議会二月定例会の冒頭。河村は三期目に向けた意欲を表明し、次の四年間で実現を目指す施策を並べてみせた。

 揺れる気持ちを断ち切ったのか。この日、「総理を狙う男はわしの永遠のテーマ、あの世になるかもしれんが」と冗談を交えてはぐらかしたが、任期四年を全うする意思を問われた際は語気を強めた。

 「精いっぱい市長をやるということ」。解散があっったらどうするのか? 「そんなもん、今の時点でどうなるか、訳分からんし」(文中敬称略)

       ◇

 現職と、前副市長が名乗りを上げ、名古屋市長選が事実上動きだす。今後の四年間の市政のかじ取りを目指す、その理由(わけ)は。対決の構図や、取り巻く議会の舞台裏をみる。

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