静岡

<18才の夏@天竜高> ヒナコ、投票行くってよ。(下)

2016年7月7日

◆考える有権者育てる

オギ(小木充教諭)=浜松市天竜区の天竜高で

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 「十八歳選挙権を考える授業」が翌日から始まる。計五回の長丁場。準備に抜かりはない。それでも担当教諭のオギ(44)は、もう一度、自問した。「いい年した高校生が、昼間っから語るかね」。経験と情熱が不安の火を消し止める。「いや、語る。語らせる」

 目標は「考える有権者」を育てること。あらかじめ決められた正解などない。主権者教育は「語り合い」が鍵を握るはずだ。「教師の話を一方通行で聞くだけでは、生徒に主体性は芽生えない。仲間との対話を通じて、自分なりの答えを考え抜いてほしい」

◆みんなで語り合い/生徒の可能性感じる

 テーマに選んだのは、天竜区が含まれる中山間地域。生徒に身近で、当事者意識を持ちやすい。過疎化や高齢化の打開策を五回にわたって考えれば、政治に求めるものがおのずと浮かんでくるに違いない。

 ただ、授業は水物。それに相手は、時に熱っぽく、時に冷めた表情。カメレオンのような高校生だ。

     ◇

 授業の序盤は、大学の研究者と浜松市の職員を招いた。タイプの違う二人だったが、中山間の集落維持への意気込みを語るまなざしは真剣だった。

 その姿に触発されたのか、各グループの議論は熱を帯び、手にした小さな白板に生徒はびっしりと意見を書き込んだ。観光客を呼ぶための「農業体験」、生活を守る「街灯や電波、大型スーパーの整備」…。

 「想像以上に乗っている」。オギの目にはそう映った。今なら中山間地域以外の課題も自分たちの問題として考えてくれるはずだ。

 シングルマザーや待機児童。若い人が関わる社会問題を新たなテーマに加えた。さらに十八歳選挙権の賛否も。当初の授業計画にはなかった。進路指導の担当でもあり「広く世の中を見てほしい」という秘めた思いもあった。

 もくろみは成功した。五回の授業後、生徒に感想を書いてもらった。「最初は十八歳選挙権に反対だったが、話し合っているうちに考えが変わった」という意見が目立つ。四十五人全員が一心不乱に机に向かい、プリントを小さな字で埋めていた。目を通すと、余白はほとんどなかった。

 授業では一貫して、個人ではなく、グループ単位で一つの結論を出すように指示した。「語ろう」というフレーズを何度、口にしただろうか。主体性を根付かせ、「納得」を目指す政治に必要な「合意形成」を体験させたかったから。語る「材料」さえ用意すれば、生徒たちは夢中になった。

     ◇

 六月下旬。授業の中身をまとめた報告書を作った。もう、迷いはない。キーをたたく指に力が入る。

 生徒たちは、本質的には語りたい欲求がある。若者の政治的無関心が言われて久しいが、若者こそ、正義に係る社会問題に感情移入する。考える有権者を育てるには、対話を中心とした学びが極めて効果的だ。

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