静岡

<18才の夏@天竜高> ヒナコ、投票行くってよ。(中)

2016年7月6日

◆17歳も選挙行きたい

 二回目の授業には、静岡文化芸術大の准教授が来るらしい−。耳にした瞬間、スミレは大教室の一番前に座ると決めた。想像は膨らむ。来年の今ごろ、浜松の街中のきれいなキャンパスにいる「私」。

 スミレの自宅は高校から徒歩一分。天竜区中心部の二俣で生まれ育った。郷土芸能部では、伝統の和太鼓演奏に明け暮れた。「人が温かい。あと、幼いころからずっといるし…」。好きな理由なんて、うまく言えない。でも文化芸大で「街づくり」を学び、二俣の役に立つ仕事がしたい。

 いざ、授業が始まると、准教授は機関銃のようにまくし立てた。二俣よりさらに北、中山間地域の人口減少や少子高齢化の深刻さをずばずばと言い放つ。

◆街づくりに疑問点/市と准教授考え相反

 速記係のようにノートを取った。「限界集落」「消滅都市」。蛍光ペンで線を引いていると、浜松市役所で働く父から聞いた「コンパクトシティー」という言葉が思い浮かんだ。

 人やモノ、行政機能を効率的に動かすため市は、浜松駅を大きな核に、合併した旧十一市町村は中心部を軸に再開発する青写真を描いていると聞いた。

 なのに目の前の准教授は真逆のことを言う。「集中化の美名の下に、歴史ある学校が統合され、公共施設もなくなるぞ。ええんか」

 混乱した。「中山間は不便だし、いっそ中心地に来たほうがみんな楽に暮らせる」と思っていたのに。

     ◇

 六月下旬の放課後。愛してやまないアイドル「嵐」ファンの仲間とカラオケに行った。歌の合間もメンバーの話題が続く。東京都知事の後任に「翔君のお父さん」、桜井俊氏は出馬するのかしないのか。「子どもの知名度を当てにされているだけ。息子に迷惑をかけてまで、出てこないって」。スミレはいつものくせで机を軽くたたき、一席ぶってみた。

 帰宅し、録(と)りためた嵐の番組を見る。勉強に差し支えないように一・五倍速の早送りで。でも心に引っ掛かった疑問は消えない。「私の目指す街づくりって何だろう」

 コンパクトシティーを進めると、佐久間や水窪などの中山間の集落はどうなるのか。施設の統廃合は進み、住みづらくなっていくのではないか。准教授の言葉を思い出す。「住んでいる街には、みんな愛着や誇りがあるんや」。私にとっての二俣と同じように。

     ◇

 四回目以降の授業では、政治や十八歳選挙権の意味を学んだ。だが八月生まれのスミレに投票権はない。「せっかく地域のあり方を考えても、誕生日が少し遅いだけで投票できないって…」。ため息にいら立ちが混じる。「同じ教室の中に投票できる人、できない人がいるのは、めっちゃ不公平。『年度内に十八歳になる人』とか、もう少し工夫できないのかな」

 導き出した結論は、「みんなが納得できる回答を出す。それが政治だし、それが街づくり」。今回、投票という形で街づくりへの意思を示せなかったけれど、進学後にもう一度、よく考えてみるつもりだ。

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