静岡

原発問題なぜ語られぬ

2016年6月26日

◆市民団体が静岡市に避難計画要望

静岡市の広域避難計画策定を求める陳情書を栗田裕之議長(右)に手渡す小笠原学さん(中)=静岡市役所で

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 参院選で「原発」を巡る論争が盛り上がらない。中部電力浜岡原発(御前崎市)がある静岡選挙区では重要な課題の一つだが、与党候補も最大野党の候補も公示日の第一声で言及しなかった。静岡市に原発事故時の広域避難計画策定を求めている市民団体「静岡市・子ども被災者支援法を考える会」代表の小笠原学さん(41)=静岡市葵区=は「福島が忘れられている」と危機感を抱く。

 公示前日の二十一日。小笠原さんは静岡市議会の栗田裕之議長に面会し、広域避難計画の策定と安定ヨウ素剤の事前配布を求める陳情書を提出した。県内外から集めた百五十三人の署名や、参加者の九割が「静岡市にも避難計画は必要」と答えた街頭アンケート結果も提示。「多くの市民が原子力防災を求めている」と伝え、栗田議長は「検討する」と受け取った。

 静岡市は、浜岡原発から三十五キロ以上離れており、県が定めた緊急防護措置区域(UPZ)三十一キロの圏外だ。国は同市に原子力災害対策を義務付けておらず、県の広域避難計画でもUPZ圏内の避難者の受け入れ先とされている。同市の地域防災計画にも、原子力災害時に静岡市民が被ばくを避ける手だては記されていない。

 しかし、小笠原さんは「福島の教訓を考えれば、静岡市にも放射性物質が降り注ぐ可能性がある」と話す。福島第一原発から四十キロ余離れた福島県飯舘村は、現在も全村避難状態にある。

 小笠原さんは二〇一一年四月から毎月、福島県の保育所などに静岡の有機野菜を送る活動を続けてきた。被災者と交流する中で、避難指示区域の内外で補償や支援に格差があり、地域が分断された苦難を知った。

 「福島の苦しみを静岡で繰り返してはならない。避難の権利を守りたい」。強い思いで、UPZ圏外にも避難計画が必要と訴える陳情書を市議会に出した。

 UPZ圏外に防護対策を求める動きは静岡市だけではない。三島市や沼津市などの市民は「広域避難を考える県東部有志実行委員会」を立ち上げ、県原子力安全対策課にUPZ圏外も含めた広域避難計画を求めてきた。関西電力高浜原発(福井県)から四十五キロ以上離れた兵庫県篠山市は、市民委員会の提言を受け、昨年度から安定ヨウ素剤を希望者に事前配布。広域避難計画に代わるガイドブックの作成も検討している。

 こうした動きと対照的に、四月にあった御前崎市長選では原発再稼働は争点にならなかった。参院選でも安倍晋三首相は「消費増税先送りの信を問う選挙」と位置付ける。選挙戦に入り、反原発を掲げる党を除き、原発問題を取り上げる演説はあまり聞こえてこない。小笠原さんは「静岡県にとっては浜岡再稼働が問われた選挙。若い人にも一票の重さを感じてほしい」と訴える。

 陳情書は二十七日の市議会運営委員会で取り扱いを協議され、審議対象と判断されれば、七月六日の総務委員会で審査される。

(松野穂波)

 <広域避難計画> 原子力災害発生時に住民の被ばくを防ぐため、避難先や移動手段を細かく定めた計画。国は、原発からおおむね半径30キロを目安に県が定める緊急防護措置区域(UPZ)圏内の自治体に計画の策定を求めている。静岡県は浜岡原発から31キロ圏内11市町を対象にした計画を3月末に公表した。

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