静岡

<一票の夏> 有識者に聞く(下)

2016年6月22日

◆静岡大・日詰一幸教授

◆生活どう豊かになるのか 身近な問題で選ぶ方法も

争点はアベノミクスの成果と福祉政策と話す静岡大の日詰教授=静岡市駿河区で

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 −今回の争点は。

 一つ目はアベノミクスの成果が地方に行き渡っているかどうか。二つ目は福祉政策だ。年金や介護、経済格差、少子化対策などの問題があり、いずれも世論調査などでは興味を持つ有権者が多い。静岡県内でのアベノミクスの効果は、生活実感としてはあまりないのではないか。大企業の基本給はそれなりに上がり、有効求人倍率は一倍を超え悪くはないが、地方の中小までには行き渡っていない。

 −それでも安倍内閣の支持率が堅調な理由は。

 選択肢がないのが一番の理由だろう。小選挙区制度は政権交代しやすいと言われているものの、民進党が国民の信頼を勝ち得ていないのが最も大きい。野党共闘がどれだけ効果的なのか読めないところもある。ただ、民進と共産党の合計得票数や、三割いる支持政党なし層がどう動くのかにも今回は注目している。

 −候補者の訴えのどこに着目すればいいか。

 候補者が地方の有権者に向け、具体的にどう豊かにするのかを語ることが重要。自分にとって、最も切迫しているのは何か。自分が身近に思える問題で選ぶという考え方もある。一方で政策だけでなく、候補者の資質や親近感も投票行動に影響を与える。例えば母親の候補者なら子育て体験を通じて、保育政策を訴えれば有権者の受け止め方も違う。現職が強いのは間違いない。それなら新人は得意の政策領域について、どうやって考えを提示できるかが重要になる。

 −参院選は全県が選挙区だが、候補者はどう有権者に訴えればいいのか。

 現職はこれまでの実績があるが、新人はないので、地域にどんな形で貢献できるのかを示す必要がある。有権者を引きつけるには、つじ立ちが一番いい。なかなか誰も聞いてくれない中、人の心をつかんでいくにはどうすればいいか、工夫を重ねていける。地道な努力が人を引きつける。

◆何かのきっかけで若者に関心が広まる可能性ある

 −十八、十九歳の有権者をどうみるか。

 主権者教育を受けていない世代が急に有権者だ、と言われてもピンとこない。でもソーシャルメディアに簡単にアクセスできる世代なので、何かのきっかけで、一気に関心が広まる可能性がある。興味を持ったら彼らは自分で調べる。それが投票行動につながれば望ましいが、政治批判にもなり得る。

 −「自分が投票してもどうせ変わらない」と思う若者にどう投票を促す。

 若い時に不条理に立ち向かう経験がないと、政治に目が向かない。昔は学生運動が起こったが、静岡大には今は自治会もない。今の若い世代は、自分たちが不満に思っていることを訴える方法が分からないのでは。SEALDs(シールズ、自由と民主主義のための学生緊急行動)は、疑問をほっておかなかった。情報発信力もあり、同世代が戦争に行くかもしれないというところにものすごく共感を生んだ。若者のスイッチの入れ方はいろいろある。そこに入り込めばいい。政党は将来を担える若手の政治家を育てるのも大事だ。

<ひづめ・かずゆき> 1955年、長野県生まれ。専門は行政学。名古屋大大学院法学研究科を経て、静岡大人文社会科学部教授。主な共著書に「分権社会の到来と新フレームワーク」など。

(この企画は本田英寛、池田知之、斉藤明彦、神谷円香が担当しました)

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