静岡

<18才の夏@天竜高>5時間目

2016年6月15日

◆変わるの?でも投票行こっ 最終授業、議論熱く

グループで話し合い、白板に次々と意見を書き込んでいく生徒たち=浜松市天竜区の天竜高校で

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 浜松市天竜区の天竜高校で繰り広げられた選挙を考える授業も、いよいよ最終回となった。計五回のまとめとなる十四日は、担当の小木充教諭(44)の意外なひと言で始まった。

 「十八歳を若者、若者って言うけど、先生だってそうだよ」

 四十四歳、妻と三人の子持ちのはず…。ぽかんとした生徒たちを尻目に、小木教諭は年代別の有権者数を示したグラフをスクリーンに映し出した。四十代以上が圧倒的に多く、十八〜十九歳は全体の2%。有権者全員を横一列に並べると、真ん中にいるのは五十三歳だという。「ほら、選挙に関しては若者だよ」と笑いながら、画面を次に送る。

 政治家は投票の多い中高年や高齢者の期待に応えざるを得ない−。この傾向について「シルバー民主主義」という言葉を使って説明すると、本題に移った。

■「十八歳以上に選挙権が引き下げられて、若い力は政治を変えられるか」

 各グループで統一した意見を求められ、生徒たちは身ぶり手ぶりを交えて語ったり、腕組みをしてじっと考え込んだり。少しずつ白板が埋まる中、教室前方のグループは真っ白のままだ。大友拓海君と福田理美さんが言い合っている。つい、語尾が強くなる。

 「今でさえ若者の投票率は低いのに何が変わる? 俺もそうだけど知識はないし、関心もあまりない」

 「やってみないと分からんだに。選挙権を持ったら興味出るって。政治に関する授業も増えるし、知識も身に付いて変わるかも」

 溝口龍世(りゅうや)君のグループは「長い目で見れば可能」と結論づけた。政治資金絡みの報道に嫌気がさし、他のメンバーが「政治家なんて誰も信用できない」と口をそろえる中、溝口君のひと言は空気を変えた。「変わるには時間がかかると思う。十八歳選挙権を与えられた自分たちが親になるころ、子どもに十八歳が政治にかかわる大切さを伝えられると思うんだ」

 各グループの回答が出そろうと「話し合った意見をグループ外の人に披露してみて」と小木教諭が促す。席を立ち、自由に議論を始める生徒たち。これまでになく盛り上がった。

 前回の授業で「納得を目指すのが政治」と熱弁した小木教諭。生徒の目をのぞきながら「対話の大切さが分かったよね。だから、もっと自分や社会を知らなきゃ」。熱っぽくまくし立て、言葉をつないでいく。

■「ところで、シルバー民主主義って言ったけど、若者も自分の世代の利益ばかりを追うのかな。これを見てほしい」

 前回、「優先して解決するべきだ」と、生徒たちが色つきの付せんに書き込んだ四家族の課題だ。住居や世帯構成、年齢がそれぞれ異なっていたが、小木教諭が集計結果をスクリーンに示した。二十代夫婦が抱える「待機児童問題」、八十代夫婦が直面した「中山間地域の交通手段」、母子家庭の「経済的な苦しみ」が上位を占めていた。

■「君たちはもう、世代を超えた政治的対話を始めているんだ。ちゃんと他の世代のことも考えている。社会は十八歳の君たちに期待しているよ」

 授業が終わり、早川陸君がつぶやく。「投票に行ってもたぶん何も変わらん。でも、行かずに変わらないよりもまし」。隣の女子がすぐさま応じる。「あっ、今のかっこいいね」

(西田直晃)

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 本紙はもうしばらく天竜高校の密着取材を続け、随時紙面で紹介します。

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