静岡

<18才の夏@天竜高>4時間目

2016年6月11日

◆「納得」目指すのが政治 話し合い行きつ戻りつ

架空の4世帯の家族の解決すべき課題や優先順を、グループになって考える生徒たち=10日、浜松市天竜区の天竜高校で

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 浜松市天竜区の天竜高校の選挙を考える授業は、やや間隔が空いた。四回目となった十日、これまで学んできた中山間地域の現状と課題を念頭に、担当の小木充(おぎみつる)教諭(44)はこう切り出した。

■「今日は中山間地域だけじゃなく、浜松の市街地にも範囲を広げて考えてみよう」

 スクリーンには、居住地や世帯構成の異なる四家族=別表=の説明が映し出された。小木教諭が授業用に考えたものだ。

 三〜四人のグループに分かれた生徒たちの手元には、四色に色分けされた大きな紙と、同じ四色の付せんが用意された。

■「それぞれの家族が抱える課題、そして、どうすれば解決できるか。付せんに書いて、紙に貼り付けようか」

 小木教諭の号令で作業が始まった。メンバー全員が一つの家族について話し合ったり、一人一人が黙々と各家族の課題を書いたりとグループで対応が分かれた。「家族が大変だと感じていることを箇条書きにすればいい」。小木教諭はペースの遅いグループにアドバイスを送る。

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 「ニートはやばいよね。お母さん大変だよ」。Cに注目した増田比菜子さんはつぶやきながら、はす向かいの稲垣近子さんの額に付せんをくっつけた。おどけた表情の稲垣さんはDに関心を寄せ「子どもが生まれるなら働かないと。娘が入園できる保育園があるか調べなきゃ」と話にぐっと入り込んだ。

■「昔と違って共働きの時代。育児と仕事を両立する母親になりたい」

 増田さんと稲垣さんの意見がぴたりと合った。

 「ただ、子どもをなかなか預けられないのが問題」。溝口龍世(りゅうや)君はその場では発言できなかったが、心の中でそう思った。

 旧春野町に住む溝口君は、最近、自宅の隣に住む高齢夫婦のご主人が亡くなったと聞いた。奥さんは運転免許を持っていないらしい。近くに息子が住んでいて大事には至っていないが、「Aの状況にとても似てる。あまり、人ごとじゃないな」。早川陸君が続ける。「中山間地域には交通手段がないから、免許がないとつらいと思う」

 ここで小木教諭が大きな声を上げて、話題を転換した。「今のは浜松の話だけど、日本の課題でもある。次は、その中で最も優先すべき課題をグループの中で決めよう」。声は次第に熱を帯びていく。

■「政治っていろんな考え方があるけど、優先順位をつけることもその一つ。さあ、語ろう」

 生徒たちの手元には、ひし形が描かれたもう一枚の紙がある。対となる鋭角の「最優先」と「後回し」にそれぞれの付せんを配置することで、一目で順位が分かる。生徒たちは一つずつ付せんを並べ直した。

 「進学に奨学金を借りると後が大変」「保育園が不足している」「全部、お金があれば解決するのに」。反論、賛同、納得…。話し合いは行きつ戻りつを繰り返す。答えを絞るのは難しいようだ。

 「政治って、みんなを幸せにすること、ではありません。それができれば素晴らしいけど、そんなにうまい話はない」。授業の終わりが近づき、小木教諭はこう語った。

■「政治って、みんなが納得して暮らせるようにするもの。納得だよ。だからこそ、話し合いと合意形成が必要なんだ」

 次回は十四日。予定では最終授業となる。

(西田直晃)

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