静岡

「共通投票所」県内は設置なし

2016年6月9日

◆二重投票防ぐシステム整備が課題

写真

 公職選挙法が改正され、七月の参院選から、投票日当日に、人が集まる商業施設などに「共通投票所」を設けることができるようになった。その自治体の有権者なら誰でも一票を投じることができ、投票率向上が期待されるのに、静岡県内では設置されない見通しだ。 

 総務省によると、共通投票所の導入を決定しているのは、熊本地震で被災した南阿蘇村のほか北海道函館市など全国でも四市町にとどまる。二重投票や費用負担の懸念から、商業施設に期日前投票所を置く静岡県の自治体も「ハードルが高い」と消極的だ。

 焼津市は今回の参院選から、期日前投票所を一カ所増やし、新たにイオン焼津店に設置する。買い物客や十代の有権者が投票しやすい環境を整える。熱海市はJR熱海駅前のビル内に、伊東市も商業施設に設けることを決めた。

 しかし、人が集まると見込んで新設するのに、有権者が利用できるのはいずれも期日前だけ。焼津市選管の担当者は、二重投票を防ぐシステムの整備を課題に挙げる。

 二重投票を防ぐには、有権者情報を管理するデータベース(DB)と、各投票所を専用回線でつなぐ必要がある。有権者が投票すると、投票所のパソコンから投票済みの情報をDBに送信する。これにより、同じ人が別の投票所で投票を試みても、DBで投票済みと分かる。投票所の数が少ない期日前投票は、このシステムを運用している。

 一方で、投票所の数が増える投票日は、このシステムを使わずに二重投票の防止を実現している。それが、有権者が行く投票所をあらかじめ指定することだ。共通投票所を設けて二重投票を防ぐには、全ての投票所をネットワーク化することが前提となる。

 浜松市選管の担当者は「共通投票所にふさわしい場所があるのかどうかは、よく検討しなければいけない」と慎重だ。静岡市選管の担当者も「山間部でも確実につながり、情報が漏れないネットワークづくりが求められる」と指摘する。

 専用回線を整備する費用も自治体を悩ませる。磐田市選管の担当者は「専用回線の維持費やシステム更新の費用がかかる」と難色を示す。

 県選管が四月末に全三十五市町に照会したところ、今回の参院選で共通投票所をつくる市町はない。

◆簡単な作業ではない

 <選挙制度に詳しい静岡県立大の前山亮吉教授(政治学)の話> 選挙事務は簡単な作業ではなく、急な改革に現場が追い付いていない。これまでミスを少なくできたのは、規制が厳しかったから。有権者の利便性向上を考えることはいいが、その半面、選挙の正確さという利点は失われる。投票率の向上に即効薬はない。実のある法改正とは言えず、その典型が共通投票所だ。

(斉藤明彦、渡辺聖子)

 共通投票所  投票日当日に同じ自治体の有権者の誰もが行ける投票所。駅や商業施設、学校などに市町村選管の判断で設置できる。投票環境の向上を目指した改正公職選挙法が四月に成立し、今回の参院選から適用となる。これまでは投票日当日は、選管が指定した一カ所でしか投票できなかったが、共通投票所を設ければ、有権者は自分にとって行きやすい投票所を選べるようになる。

主な政党の公約

新聞購読のご案内