静岡

<18才の夏@天竜高>3時間目

2016年6月1日

◆違う視点で課題探る 行政マンが中山間対策

生徒たちに助言する市職員の藤田裕さん(左から2人目)と小木充教諭=浜松市天竜区の天竜高校で

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 天竜高校の選挙を考える授業は三回目となった。三十一日は浜松市市民協働・地域政策課の藤田裕(ゆたか)さん(45)を迎え、前回に続いて中山間地域の課題を探った。生徒たちに「考える有権者」になってもらうため、担当の小木充教諭(44)はまだ、選挙自体の意義や仕組みについては深掘りしない。

 藤田さんは課の中山間地域グループに所属し、移住希望者の窓口になったり、市街地の団体との交流イベントを企画したりと汗を流している。「行政マン」らしい淡々とした口ぶりで天竜区の現状を説明しつつ、苦しい胸の内を吐露する場面もあった。

 「天竜区周辺は一年間で千人が転出する一方、移住者は二十人ほどしかいない」。急速に進む過疎化と少子高齢化の現状を説明する一方で「住民が地域に住む誇りを失いかねない。でも、生まれたときからそこに住んでいる人たちを切り捨ててはいけない」とも。

 小木教諭が際どい質問をぶつけた。「選択と集中」という言葉を使って行政は中山間地域を見捨てようとしているのでは−。そう批判したのは前回登場した静岡文化芸術大の船戸修一准教授(46)。関西弁の熱血先生が話題にした小学校の統廃合は生徒の関心も高い。藤田さんは答えた。

■「人も税収も減り、職員や議員の中にも正直、中山間に金を使うのはムダだと言う人もいる。決してそんなことはない。地元のNPOが街づくりや福祉を担う動きもあり、そこに連携していけば道はある」

 授業は残り十分ほどに。グループごとに手元の白板に答えを書くようにと、生徒にお題が出された。

■「あなたを含む若者が暮らしたい中山間とは」

 西田脩弥君は「難しい話を聞くよりも、グループで考えるほうが好き」と前のめりに。その半面「そもそも行政ってどういう存在? 正確に理解できない用語があると、そこで頭が止まっちゃう…」と嘆く。授業中、西田君と同じような硬い表情の生徒も目立った。

 電波の整備、働く場所、下水道、街灯…。西田君と同じグループで、父が旧春野町出身の唐沢知夏さんは周りと相談し、「大型スーパー」と書いた。父と春野町周辺をドライブしても、買い物ができる店はない。藤田さんの「高齢化率が100%の集落では、バスが週一回しか走らない。買い物にも苦労する」という話が頭に残っていた。

 山岡咲理(えみり)さんは「まずは来てもらうこと。住んでもらうのはそれから」。隣に座った小倉勇美さんと語り、「紅葉狩り」「農業・暮らし体験」と記入した。ともに区外在住だが、街のいたるところに咲き誇るサクラ、ウグイスやセミの鳴き声。登校しているうちに季節感の豊かさが地域の最大の魅力と思うようになった。

 授業の終わりに藤田さんは穏やかに語った。

■「君たちはこれから有権者。中山間対策を投票の一つの視点にするのもいい」

 前回は熱血先生、今回は沈着行政マン。同じ話題を違う角度から聞けた。山岡さんは「地域をどうにかしたいっていう根本は、みんな同じなんだ」と感じた。

 次回の授業は六月十日。

(西田直晃)

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