静岡

<18才の夏@天竜高>1時間目  

2016年5月25日

 夏の参院選から選挙権年齢が十八歳以上になるのを受け、高校で政治や選挙を学ぶ教育が盛んになっている。浜松市天竜区の天竜高校でも二十四日から来月十四日までの計五回、三年生の現代社会の授業を利用して、国や地方の課題を考える。選挙で何かが変わるの?−。生徒の素朴な疑問は解消されるのか。本紙の西田直晃記者(28)が教室に密着し、生徒の生の声と授業を通じた変化を追う。

◆日本の課題は? 少子高齢化、人口減少…

 視聴覚室の壇上で、現代社会を担当する小木充教諭(44)が生徒四十五人を前に声を張る。天竜高校で二十四日始まった選挙を考える授業。「みんなで語り合う形式でやろう。男女混合で四、五人の集団をつくってほしい」。グループごとに小さな白板を手渡し、前方のスクリーンにタイトルを映し出した。

■今、「日本の課題」の話をしよう

 小木教諭の最終的な狙いは投票所へ行かせることではない。「生徒に考える有権者になってもらうのが目標」。五回の授業で、日本や地域を知るきっかけにしてもらえたら。そう願って授業の準備をしてきた。

 「ちゃんと考えてんの?」。頬づえを突き、首をひねり始めた男子は女子にたしなめられると、口元に苦笑いを浮かべた。ああでもない、こうでもないと話し合ううちに、手元の白板が少しずつ埋まっていく。熊本地震の復興、税金の用途、原発問題…。小木教諭は「その中で一つに絞ってみて」と語りかけた。

 生活に根差した問題意識もちらほら見られる。中野晴(ひなた)さんのグループは少子高齢化に注目していた。「昔はたくさん子どもがいた。だって、うちのばあばは七人きょうだいだし」。女子バレー部でも仲良しだった山木怜奈さんが隣でつぶやくと、中野さんはうなずいた。「でも、共働きなら、なかなか子どもを産めないし、育てられないよね」。最近、少し疲れて見える両親の顔が浮かぶ。

 「どうして共働きが増えたんだろう」「…景気が悪いからじゃない」

 ここでいったん、話し合いは中断。各グループの代表者が「課題」を発表すると、小木教諭の解説が始まった。

■未来を語る。その一つとして「人口減少問題」

 スクリーンに映し出される厳しい現実。今後三十年足らずのうちに、多くの地方都市で二十〜三十代の女性は半減する。一人の女性が産む子どもの平均数を示す「合計特殊出生率」も低水準のままだ。

 ひと通りの説明を終えた小木教諭は再び問い掛けた。「そもそもの話、人口減少の何がまずいのかな」。もう一度、グループで話し合う。介護と年金。「支える側の若者が減れば、高齢者を守れなくなる」という意見が目立った。そんな中、丸刈りの野球部員、金原瑠佳(るか)さんは「働く人が減って、経済が厳しくなる。そうしたら国が成り立たない」と発言。野球部ならではのよく通る声が響いた。

 「高齢者だけの問題じゃない。若者の負担も増えていく」などと生徒の身近な問題として意識させていく小木教諭。五十分間の授業の終わりが近づくと、初めて本題を切り出した。

■「選挙権が拡大するって知ってるね。十八歳から投票できるようになる」

 チャイムが鳴る中、かぶせるように続ける。「君たちの声を政治に反映させるためです。これから、一緒に考えていこう」

 授業が終わった後、「そろそろ自分も大人になる。勉強しないと」と語った金原さん。下を向く生徒もちらほらいたが、まだまだ授業は始まったばかり。少しずつ、考えの幅は広がっていくはずだ。生徒たちの顔を見ていてそう思った。

 次の授業は二十七日。

 <天竜高校> 2014年4月に天竜林業、二俣、春野の3高校が統合し、旧天竜林業高校の校地に開校した。林業が盛んな天竜区の中心部にあり、総合学科と農業科を併設する。過去3年間の卒業生の進路は就職などが56%で、大学や専門学校に進学した44%を上回る。全校生徒は644人。旧春野高校の校地には普通科のみの天竜高校春野校舎がある。

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