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見えぬ効果、模索続く 自治体の人口減と少子化対策

松阪市飯南地域で行われている「恋活」イベント。豊かな自然の中で交流することを売りにしている=松阪市のリバーサイド茶倉で

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 人口減少と少子化の対策が、多くの地方自治体にとって喫緊の課題になっている。県内の自治体でも子育てから、移住定住の促進、男女の出会いの支援まで、多角的に施策を打ち出しているが、果たして行政の手だては有効となり得るのか。多気町の取り組みを取材した。

 玉城町で暮らす久保祐紀さん(36)と真実さん(35)夫妻。知り合ったきっかけは、多気町の後援する縁結び団体「ハッピー縁ジェル多気」の交流イベントだった。二〇一四年に結婚。今は二歳の娘を育てており、第二子も授かった。二人はボランティアとして縁結び団体の運営にも携わっている。

 団体は久保行央町長が一〇年に初当選した際、公約に掲げた人口減対策の一つとして設立。当初、町が運営していたが、一一年から谷村智往(ちゆき)代表(57)らボランティアの運営に移った。町から補助金を受け、七夕やクリスマスの交流イベントを開き、結婚相談も行う。

 民間が行う婚活や出会いイベント「街コン」と違い、自治体が関与するものは女性にも実費負担を求めることが多い。多気の場合もそうだ。「結婚へ真剣な人の参加が見込まれる。私たちの企画の場合、女性の申し込みが多く、早く埋まる」と祐紀さん。真実さんは「行政がやることで安心感がある」。これまでに九組が結婚にこぎ着けた。

 町は縁結びイベントをはじめ、さまざまな移住定住支援をしている。中学生までの医療費と保育園児の給食費の無料化、新規就農者の研修期間中の収入保証。一五年四月に始めた空き家所有者と移住希望者をつなぐ空き家バンクでは今年八月末までに、町外から十五人の移住者を呼び込んだ。

 一定の成果を上げているが、人口減のペースは比較にならない。町の人口はピークの一九五五(昭和三十)年は二万人近かったが、今年七月末で一万四千七百五人。将来推計では二〇六〇年に一万人を割り込む。

 行政の人口減対策に対し、久保さん夫妻が求めるのは総合的な居住環境の整備だ。知り合ったころ、祐紀さんの職場が町内にあり、真実さんの実家も町内で、多気で暮らしたかった。しかし、夫婦二人暮らしに適した住宅が少なく、家賃も高かった。いったん松阪市に住み、その後に移ったのが祐紀さんの実家のある玉城町だった。

 ハッピー縁ジェルを通じて結婚した九組のうち、今も町内に住むのも二組だけだ。「住宅や子育て環境などが充実しないと、他の自治体に移ってしまう」

 目に見える効果が分かりづらく、試行錯誤が続くが、久保町長は「毎年二百三十人ほどが亡くなり、生まれてくる子どもは百人程度。何もしなくては、人が減っていくだけ」と危機感をにじませる。「地域にとって子どもの笑顔は一番の活力。雇用を生む企業誘致や子育て支援、縁結びも含めた定住促進は、今後も続けないといけない」と語る。

 地方自治に詳しい四日市大の岩崎恭典学長は、自治体の人口減への危機感には理解を示しつつ、少子化対策には「婚姻や、子どもを産み育てることは個人の価値観にもよるので、費用対効果も求められる行政の事業にはなじまない面もある」と、対策を講じる難しさを指摘。その上で「人口と税収が減少する時代には、事業の選択も必要になる」と話した。

 (古檜山祥伍)

 

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