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いじめ自殺なくなれ 児童文学作家・村上さん、小説で訴え

いじめによる自死遺族をテーマにした小説を出版した村上さん=松阪市曽原で

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 松阪市曽原の児童文学作家、村上しいこさん(48)が、初めて一般向けに書いた小説「死にたい、ですか」(小学館)を出版した。いじめを苦に自殺した男子高生の家族の苦悩と葛藤を描いた物語。自身もいじめと虐待を経験した村上さんは作品を通して、いじめに悩む子どもたちに希望を与えられたらと願う。「無理して頑張らなくて大丈夫だよ」とメッセージを送る。

 十二年前、童話賞の授賞式のため山形県高畠町を訪れた。その日、その町で一人の女子高生が飛び降り自殺した。授賞式で高揚していた気分が一瞬でしぼんだ。このころから、いじめをきちんと書かなくてはと思ったという。

 いじめによる痛ましいニュースが報じられるたび、憤りを感じてきた。津地裁であった自殺した高校生へのいじめを巡る裁判も傍聴した。「分かりません」「知りません」。本音が見えない事務的なやりとりに悲しさとやりきれなさが募った。「命を絶っても、誰も救われんやん」

 作品の主人公は、高校でのいじめを苦に自殺した兄を持つ女子高生。母は兄の無念を晴らそうと加害者を相手に訴訟を起こし、父はアルコールに溺れていく。自死遺族の苦しみと再生を描いた。物語の中心となる法廷でのやりとりは、実際の裁判を傍聴し取材を重ねた経験を生かしてリアルに表現。登場人物の心情も丁寧に描きながら三重県を舞台にストーリーが進む。

 村上さん自身も苦しい経験をしてきた。物心ついたときから継母に日常的に殴られ、いつも傷だらけ。ご飯の用意はなく、毎日同じ服を着て登校した。気持ち悪いと同級生からは疎まれ孤立した。「次第にしゃべらず、笑わなくなっていった」と幼少期を振り返る。

 「殺して」と中二の夏、継母に頼んだことも。家にも教室にも居場所がなかったが、学校の図書室でだけは一人で本を読みふけることができた。旅館で住み込みの仕事を始めた二十二歳のとき、ようやく家を出て、自由を手に入れた。

 「いじめは悪と切り捨てるのは簡単。被害者も加害者もつらい思いをする子も、光を感じられる作品にしたかった」と村上さん。作品を通じて「いらない子なんていない。みんな平等に幸せになる権利があるんだよ」とのメッセージを伝えたいと思っている。

 村上さん自身、過去は忘れられない。でも「私は今、幸せです」と言い切る。

 四六判、二百七十六ページ。千五百円(税別)。全国の書店で販売している。

 (斉藤和音)

 

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