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クマ、森に帰せない 先月いなべで捕獲、「危険」住民反発

クマが捕獲された川原地区。集落と山が近く、山を越えるとすぐ岐阜県になる=いなべ市北勢町で

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 いなべ市北勢町川原で先月二十九日にイノシシのわなにかかったツキノワグマは、地元で放獣する場所が見つからず、一時的に岐阜県高山市の牧場に預けられることになった。ツキノワグマは県の絶滅危惧種に指定されているため、県のマニュアルでは地元の森に帰すことになっているが、住民は「危険で絶対認められない」と反発している。

 クマは推定十歳、体長一・四メートル、体重九四キロのオスで、同種の中でも大きい。県内のツキノワグマは大台町以南を中心に生息し、奈良、和歌山両県と合わせても百八十頭ほどにとどまるため、県は希少種として保護。マニュアルでは誤ってわなで捕獲しても殺処分できず、同じ市町内の人家から二キロ以上離れた場所に放すことになっている。

 県が現在のマニュアルを制定した背景には、今回の捕獲現場の近くで二〇一五年に同様にツキノワグマが捕獲された際の失策がある。県はクマを滋賀県内に放し、近くで女性がクマに襲われ重傷を負った。後に女性を襲ったのは別のクマと判明したが、他県に放った手法が批判を浴びた。

 このため県は県内放獣を徹底。捕獲地から遠くに放つと、遺伝的に違いがあるクマと交雑する恐れがあるため、生態系保護の観点から、同じ市町内と定めた。

 一方、いなべ市獣害・ブランド対策室は「山深い県南部と違い、いなべ市にマニュアルを適用するのは無理だ」と主張する。川原地区に隣接する山は狭く数キロで岐阜県に達するため、担当者は「現実には放せる場所がない」と指摘する。近くに工業団地があり民家も多い。息子(5つ)と公園で遊んでいた女性は「子どもの安全を思うと捕まえたクマを放つなんて考えられない」と不安を訴える。

 クマの希少性を重視する県に対し、人を襲う猛獣と考える住民が多い地元の意思疎通はうまくいっていない。自治会長の男性は「牧場に引き取ってもらったのでもう終わった話」と強調。預けるのは半年以内の契約で、県はその間に放てる場所を見つける方針だが、男性は「先の説明は受けていない」と話す。県獣害対策課は「いなべ市を通じて説明している」と述べるが、市側は「県が説明すること」と食い違っている。

 さらに市の担当者は、川原地区の集落と隣接する岐阜県ではツキノワグマは狩猟対象になっているのに、三重県側では殺処分が認められていない矛盾も指摘する。「県のマニュアルは北勢の実情を反映していない。半年の間に改訂し放獣しないで済むようにしてほしい」と求めている。

 (森耕一)

 

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