トップ > 三重 > 8月28日の記事一覧 > 記事

ここから本文

三重

需要走らせ“足”を守れ 伊賀線、公有民営移行5カ月

伊賀鉄道の忍者列車=伊賀市上野丸之内の上野市駅で

写真

 伊賀市の伊賀鉄道伊賀線が四月から「公有民営方式」に移行して五カ月が過ぎた。移行は利用者減で経営危機に陥った鉄道を市が所有することで、高校生や高齢者らの通学と生活の足を守るため。立て直しへの模索は続くが、市は、二〇一七年度内に利用が見込まれる地域に新駅を開設。外国人観光客の呼び込みなど新たなニーズ掘り起こしに力を入れる。

 八月の平日午前八時二十分すぎ、市中心部の上野市駅から伊賀神戸行きの車両に乗り込んだ。二両編成の各車両に制服姿の高校生らが十人前後ずつ乗っている。夏休みのためか空席が目立つ。駅員に聞くと朝の通勤通学時間帯を過ぎると利用者はぐっと減るという。

 高校生の通学に鉄道は欠かせない。市によると、一六年度の輸送人員百四十五万四千人のうち通学定期の利用は八十万人だった。上野高校三年竹元龍我さん(17)は、近鉄桔梗が丘駅(名張市)から上野市駅まで通学している。「朝は通学する人で混んでいる。伊賀鉄道がなかったら困る」と必要性を訴える。

桑町−猪田道駅間に造られる新駅の完成予想図

写真

 それでも少子化で通学定期の利用者は減り続けている。一六年度は前年度と比べ五万七千人減り、一六年度の赤字は三億三千万円。森健至・市交通政策課長は「通学の利用者の減りをどれだけ緩やかにできるかが重要になる」と話す。

 人口九万三千二百七十七人(七月末時点)のうち高齢者は31・5%。市は四〇年に34・4%に増えると試算。市民にマイカー依存が強いとはいえ、いずれ体力は落ちて運転できなくなる。そのとき買い物や病院などへの移動はどうなるのか。

 一三年には、一七年度以降の鉄道を検討する勉強会(近鉄、伊賀鉄道、市、県で構成)が九回開かれた。代わりの公共交通としてバスなどが提案されたが、通学時間帯の全乗客の輸送が難しいと判断。市が車両や線路、駅舎の補修費用を引き受ける公有民営方式での存続が決まった。

 新駅を造るのは四十九町(桑町と猪田道駅との間)で、九月に着工。近くには市新庁舎が一九年一月に移転する予定。周りには上野総合市民病院、大型スーパー、ハローワーク、県伊賀庁舎などが集まる。利便性向上で新たに利用者を見込む。

 他路線への乗り継ぎについては、駅での待ち時間を少なくできるよう、JRや近鉄のダイヤ改正に合わせている。伊賀線は単線で運行本数を増やすことは現実的ではなく、全ての利用者のニーズに応えるのは限界がある。

写真

 観光との結びつきもより強める。伊賀の忍者は世界に発信できる有力な観光資源で、インターネットを使って「忍者列車」もアピールしている。県内の宿泊施設とタイアップした忍者パックは好評。海外からのツアー客は一三年度は千二百十一人だったが、一六年度は五倍近くの五千三百六十二人に増えた。

 香港から家族とツアーに参加した万諾謙(まんろひん)さん(16)は「お茶や和室など日本文化に興味があり、伊賀に訪れた」と話し、市街地では忍者衣装に着替えた。伊賀鉄道にも乗り、「香港は地下鉄が多いので、外の風景を見られるのはうれしい。鉄道から見える風景は懐かしさを感じる」と気に入った様子だ。

 市は鉄道の収支を二四年度に黒字にする計画を立てる。森課長は「新しい需要を生み出すことで、持続可能な運営を続けたい」。

 (日暮大輔)

 <伊賀鉄道伊賀線> 伊賀上野駅−伊賀神戸駅の14駅、16.6キロ。市内の南北を結ぶ。1916年開業。44年に近鉄伊賀線となる。2007年に線路と鉄道施設は近鉄が保守管理し、第三セクター「伊賀鉄道」(市と近鉄が出資)が運行する上下分離本式となる。17年度から「公有民営方式」に移行した。漫画家松本零士さんデザインの車体「忍者列車」も運行している。

 

この記事を印刷する

中日新聞・北陸中日新聞・日刊県民福井 読者の方は中日新聞プラスで豊富な記事を読めます。

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索