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社会多様化、広がる役割 民生委員制度、創設から100年

前川さん(右)の自宅を訪れる民生委員の松永さん。緊急時のために自分の情報を保管しておく専用キットを持参した=亀山市天神で

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 地域住民の生活に関するさまざまな問題に対応する民生委員制度は今月12日で創設から100年を迎えた。児童委員も兼ね、社会の多様化で取り扱う範囲は広がる一方、高齢化やなり手不足の課題を抱える。地域と関係機関のつなぎ役、身近な相談役として地域福祉の最前線を担う民生委員・児童委員の活動を追った。

 「免許の返納、一緒に行こうか」。亀山市天神の前川智子さん(83)宅。民生委員・児童委員の松永里子さん(72)が訪れ、語りかけた。前川さんは三年前に夫を亡くし一人暮らし。最近、転んでけがをしたのを潮時と考え、運転免許証の返納を決断した。

 松永さんは返納と引き換えのバス運賃割引サービスがあることを伝えたが、きちんと手続きしないとサービスは受けられない。「返納する前に詳しい所で相談した方がいいよ。早めに行こう」と促した。

 これまで気軽に訪ねていた近所の友人が亡くなり、出歩かなくなるという不安が募る。松永さんは「二十年もしとると、勘所がつかめる。気になるからね」。顔を出しては地域の行事に誘う。前川さんも「誰にでも話せないことが相談できる。本当に助かる」と頼りにする。

 各地で民生委員・児童委員が複雑な事例に直面する例は増えた。

 亀山市民生委員児童委員協議会連合会の佐野満枝会長(67)は、同居の息子が仕事でいない時間帯に亡くなった高齢者の例を挙げ「核家族化や生活スタイルの多様化で地域も家庭事情も複雑になり、以前なら支援対象にならなかった人が網目からこぼれてしまう。同じようなことは今後も増えるだろう」と話す。

◆県内も担い手不足、高齢化 

 民生委員・児童委員は、市町村ごとに世帯数などから割り出した定数が定められている。県内二十九市町の定数は計四千百九十七人。各市町の推薦会などを通じ、選任される。

 昨年十二月に一斉改選があり、四月一日現在の就任数は四千八十二人。充足率は全国平均並みの97・3%だ。県社会福祉協議会によると津市や四日市市、志摩市などで担い手が見つからず、定数を割り込む状況という。

 委員の高齢化も課題となっている。県社協によると、昼間の活動が多いため定年後に委員になる人が多いが、定年の年齢が上がり、初任の委員が高齢化している。技能を身につけても短期間で退任することになり、経験豊富な委員が育ちにくい問題も抱える。

 県民生委員児童委員協議会の速水正美会長(69)は「原則七十五歳に達すると再任されないが、超えてもお願いする場合が珍しくない」と現状を語る。

 厚生労働省がまとめた二〇一五年度の福祉行政報告例によると、県内の委員は家庭訪問や会議出席などに平均年間約百二十八日を費やし、三日に一回を超えるペースで活動している。

 速水会長によると、以前より活動内容が増えて、特に未経験者には負担が大きいイメージもあり、敬遠される要因になっているという。「本来は地域と行政のつなぎ役。自分のペースで活動計画を立ててやるだけでも地域貢献になると思う」と話し、若い世代を含め多くの人の参加の必要性を訴える。

 (松崎晃子)

 <民生委員> 1948(昭和23)年施行の民生委員法に基づく非常勤の地方公務員。任期は3年。自ら住む地域で、高齢者や障害者などの見守りや安否確認、虐待防止などに努め関係機関との仲介役を担う。全国に約23万人おり、報酬はない。都道府県の審議会を経て知事から推薦され厚生労働大臣の委嘱を受ける。生活困窮者を救うためドイツの制度を参考に岡山県で17(大正6)年に創設された「済世(さいせい)顧問制度」が源流。「方面委員制度」として10年ほどで全国に広まり、戦後に民生委員と改称された。47年に児童福祉法が制定され子どもに関する案件を担う児童委員も兼ねる。別に、子どもや子育ての支援に特化した「主任児童委員」もいる。

 

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