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ハローペット

柏木広樹さんとリリ ご主人のチェロ 耳傾けうっとり

柏木広樹さんと愛犬のリリ。リリは柏木さんが弾くチェロの音が大好き=東京都内で

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★ミックス(メス 1歳)

 映画「おくりびと」で、主人公のチェロ奏者を演じた俳優の演奏指導や曲の吹き替えをしたのが、チェリストの柏木広樹さん。二〇一〇年には新潟での「盲導犬をふやそうチャリティーコンサート」に出演し、盲導犬のための曲も作っている。

 そんな柏木さんの発想の源だったのが、先代の愛犬、ケアーンテリアのモモだった。家族のマスコットとしてかわいがられてきたが、三年前のクリスマスに十二歳で死んだ。「末期がんでした。僕は演奏旅行中で、最期に立ち会えなかった。頭では覚悟はしていたものの、家族としていつもいるはずのモモが急にいなくなって、心に穴があいたような思いでした」

 モモの死は、柏木ファミリーを悲しみのどん底に突き落とした。それから数カ月がたったある日、「かわいい犬がいるからペットショップに行こう」と家族に促されて、気を晴らすために見に行った。

 「もちろん飼う気はありません。モモ似の犬を見るだけという約束でしたから、その時は『かわいいね』と話し合って帰ってきました」

 すぐに飼い主が見つかるだろうと思っていたが、しばらくして、また見に行ったときに驚いた。その子犬は残っていたが、別の犬のようになっていたのだった。白く輝いていた毛並みは薄汚れ、明るかった表情はやつれたようになり、ケージの中で寂しげに座っていた。あまりの変貌ぶりに柏木さんの心が騒いだ。

 「もしこのまま売れ残ってしまったら?」

 盲導犬のみならず保護犬のことにも詳しい柏木さんは、この小さな命がたどる将来を危ぶんだ。そこで急きょ、家に迎えることに。それがリリ。ミニチュアシュナウザーとマルチーズのミックスということもあり、今では白い毛並みが雪のように輝く犬に成長している。

 「先代のモモは穏やかな子で、必ず僕の横に来ましたが、この子は若くて遊びたい盛りなのか、いつも走り回っていますね(笑)」

 とはいえ柏木さんがチェロを出し、弾き始めると、リリは、その温かみのある音色に耳を傾けうっとり聞きほれている。人間の声に近いといわれるチェロの音が、相当に心地よいようだ。

 「チェロは会話ができる楽器」という柏木さん。宮沢賢治の童話『セロ弾きのゴーシュ』は、セロ(チェロ)が下手なゴーシュが、自宅を訪れた動物たちと交流する中で技術、精神の両面で成長し、心に響くチェロ奏者になっていく。幼いころから動物が大好きだったという柏木さんの奏でるチェロも、慈しみに満ちている。リリの陶酔は、それを証明しているようだ。

 (文・宮西ナオ子、写真・圷真一)

 <かしわぎ・ひろき> 1968年生まれ。東京都出身。東京芸術大音楽学部卒。在学中にバンド「G−クレフ」の一員としてデビュー。盲導犬やがん患者の支援活動を通してメッセージを発信し続けている。コンサートは2月4日、東京・晴海で開催予定。

 

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