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継続の可否、自治体任せ 「障害福祉」65歳切り替え問題 

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 障害福祉サービスを受けている人が六十五歳になると、介護保険のサービスへの切り替えを自治体から求められる。しかし、障害福祉と高齢者介護では異なる部分も多く、現在受けているのと同じサービスを受けられなくなったり、自己負担が増したりする。スムーズに移行できる人がいる一方で、障害福祉と介護の違いに戸惑う人もいる。

 この背景にあるのが、障害者総合支援法だ。第七条は、障害福祉サービスと同じ内容のサービスを介護保険でも受けられる場合は、介護保険が優先されると規定する。ただ、厚生労働省は、状況に応じて各自治体が判断するよう求めている。

 「六十五歳になっても障害福祉サービスは使える。障害者自身が誤解しているケースもある」。名古屋市の愛知県障害者(児)の生活と権利を守る連絡協議会(愛障協)で副会長を務める上田孝さん(68)は、こう強調する。

 優先の原則はあっても、障害福祉と介護保険の各サービスが同じかは障害者の状況により異なり、自動的に判断するのは難しい。厚労省は二〇〇七年、一律に介護サービスを優先するのではなく「障害者の利用意向を聞き取り、必要な支援を介護サービスで受けられるか、適切に判断する」よう各自治体に通知。一五年にも再度、連絡している。

 ただ、対応は各自治体で異なる。厚労省が一五年に公表した調査結果によると、全国の二百五十九市区町村のうち、切り替えを求める全ケースで、当事者の障害者に意向を聞き、判断するとした自治体は49%。9%は聞き取らずに判断、37%は判断が困難なケースのみ聞き取るとした。

 また、介護保険の利用限度額により、今までのサービスを維持できない場合、国は障害福祉サービスを上乗せできるとするが、示す通りに運用するのは68%で、28%は上乗せは「要介護4、5以上」などの要件を設けていた。

 介護保険に移行せず、障害福祉サービスの利用を申請した場合、介護保険申請を勧めるが、引き続き障害福祉サービスを利用できるとしたのは67%。利用期限を短くして移行を促すのは16%、利用申請を却下する自治体は6%。

 サービスの打ち切りを巡る訴訟もある。介護保険に切り替えなかったところ、重度訪問介護を打ち切られたとして、岡山市の男性(70)が市に対して、サービスの継続などを求めた訴訟の控訴審判決で、広島高裁岡山支部は昨年十二月、男性の訴えを認めた一審判決を支持。「一律に不支給決定するのではなく、必要なサービスや負担額などを考慮して、障害福祉サービスを選ぶことが相当な場合がある」などと判示した。

 弁護団に加わった名古屋市の高森裕司弁護士(51)は「介護保険と障害福祉サービスでは目的や性格が違い、介護保険に移行しなくてはいけないわけではないことを明確にしている」と評価する。

 高森弁護士は、財源に関する問題も指摘する。障害福祉は国や自治体の行政施策としてのサービスだが、介護は保険によるサービスで、財源が異なる。六十五歳以上の人が障害福祉のサービスを使いたい場合でも、介護保険で同様のサービスがあれば、国や自治体は介護保険の利用を促した方が支出は抑えられる。「国は財政的な援助はせず、自治体のやっていることを黙認している」と話す。

 厚労省は一八年度から、低所得など条件を満たす人へ、介護保険への移行で生じる自己負担分を払い戻す軽減策を実施。担当者は「市町村には一律の判断をしないでと、徹底したい」。

 六十五歳を迎えた後も引き続き障害福祉サービスを希望する場合、事前に市町村に伝える。「一人で悩まず、各地の支援団体などに相談することも考えて」と高森弁護士は助言。愛障協はパンフレットをつくり、啓発に努める。

       ◇

「自力で立てなくなると、自宅での生活が大変になる」と話す佐藤美知江さん=神奈川県内で

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◆「介護保険の支援、不安」 専門性確保、見通せず

 「リハビリのおかげで今は自力で立てている。でも、十分なリハビリができなくなったら、介護してくれている八十歳をすぎた母を困らせてしまう」。重い脳性まひがある神奈川県の佐藤美知江さん(68)の表情が曇る。

 週二回の重度訪問介護を受け、車いすを使って自宅で両親と暮らす。自宅で生活できているのは、市内にある県営の重度身体障害者向けデイサービスで受けているリハビリのおかげでもあるが、デイからは近いうちに高齢者向けの施設などへ移るよう言われている。

 デイには十五年ほど前から通っている。現在は週二回通い、そのうちの一回、理学療法士や作業療法士ら専門職のリハビリを受ける。食べたり、話したりするのも難しいが「胸の筋肉を鍛えるようになってから、水を飲んでもむせなくなった。専門職が丁寧にやってくれ、生かされている」と感じてきた。

 しかし、介護保険の対象になる六十五歳になると、状況が変わった。障害福祉サービス受給者証の更新手続きの頻度は自治体によって異なるが、佐藤さんの場合は一年ごとから三カ月ごとになった。そのたびに、書面でサービスが必要な理由を説明するよう求められる。毎回、詳細に記しているが「筋力が弱って、ヘルパーの助けを借りても書類を書くのは大変」と話す。

 施設でも、通所回数は変わらないものの、施設で週二回入っていた風呂は週一回になり、ショートステイはできなくなった。訪問介護で、ヘルパーの介助で入浴しているが「年老いてできないことが増え、滑りやすくなり、入浴が怖い。施設で機械浴ができると助かる」。

 施設を移るように言われたのは昨年九月。「別の受け入れ先を見つけて」と言われた。交渉してことしの三月までは通えるようになったが、それ以上の延長は難しそうな雲行きだ。

 この施設では、一般的に六十五歳以上の利用者には、同様のサービスをする高齢者施設などへ移ってもらっている。三カ月ごとの契約にし、その間を調整期間とし、別の施設を探してもらう。担当者は「見つからなくても、すぐにサービスは切らない。ただ、介護保険の施設を使える人が、うちの施設を使い続ければ県の財政上の負担になる」と話す。

 しかし、佐藤さんの不安は大きい。介護保険のデイサービスに変わることになれば、障害者のリハビリに詳しい職員はいないかもしれない。「体が衰えたら、自分でできることが減ってしまう」。さらに、介護サービスの利用料の負担が生じることを不安がる。「必要なサービスは受けられないのに、負担が増え大変になる」

 「六十五歳を過ぎても必要なサービスが受けられるかは、障害者が住む自治体で差がある。利用者が六十五歳近くになると心配になる」。愛知県春日井市などで視覚、聴覚障害者の就労継続支援B型事業所(B型)を運営するNPO法人「つくし」(名古屋市守山区)の村上栄子代表(66)は話す。

 つくしのB型では、七十代の利用者女性が、住んでいる市の担当者から「次の年は受給者証を更新しない」と言われた。村上さんらが市と交渉し、B型への通所日を減らし、引き続き、利用できるようにした。市は介護保険のデイサービスの利用などを提案するが、手話が必要な女性に適した施設は見つからない。

 村上さんは「女性は身の回りのことは自分ででき、要介護の認定が下りないかもしれない。通う場所がなくなれば、家に引きこもるだけ。本人の意向もくんでほしい」と訴える。

 (出口有紀)

 

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