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<悩む前に 介護離職を防ぐ> (中)人材流出にあえぐ企業

 「人は城、人は石垣」。戦国最強と称された武田信玄は言った。それは現在の企業でも同じ。しかし、家族の介護という事情で、熟達した人材が会社を離れていってしまうこともある。企業にとっても、介護する社員を支援することは、自分たちを守ることでもある。手痛い経験を出発点に、将来を生き抜く経営戦略として、介護離職への対策に乗り出した企業も増えてきた。

 それは二〇一〇年のことだった。総合商社「丸紅」の人事担当者は頭を抱えていた。「これでは人事が成立しない…」。海外の主要ポストにと期待した男性管理職が内示を辞退するというのだ。「実は家族を介護していまして…」

 以降、同様のケースは続いた。多くが経験を積み、現場を仕切る中軸だった。全社員の平均年齢は四十一歳。親の介護が視野に入る「お年ごろ」だ。

 だが、商社が海外に駐在員を出せないとなると、事業に大きな影響が生じる。同社はまず、四十〜五十代の社員にアンケートを実施した。すると、そのうちの11%が家族に要介護者がいて、その八割が本人が「主たる介護者」とされていた。将来の見通しを聞くと、84%が「今後五年以内に介護をする可能性がある」と答えた。

 社業を揺るがしかねない現象は、他の業界でも生じている。千葉銀行では副支店長を務める五十代の男性管理職が一年の介護休業を取得。必死の慰留にかかわらず、休業期間切れに伴い、退職した。

 副支店長は妻との共稼ぎだったが、妻の父親が要介護となったため、妻が退職。介護で疲弊した妻は体調を崩し、男性も介護休業を余儀なくされたのだった。

 社業への打撃を食い止めようと、各社は対応を急いだ。丸紅ではまず、どのような支援が受けられるかハンドブックを作成。専門家を招いた個別相談会も定期的に開催した。海外駐在員の多い事情から、国内に残した家族のケアを支援するNPO法人と連携した。各種手続きも代行し、海外からの遠距離介護の可能性を広げた。

 これらの対策で、同社では介護離職はほぼなくなった。同社は「社員が一人で抱え込むのでなく、プロの手も借りて仕事と介護を両立できる体制を確立することが重要」と言う。

 千葉銀行もアンケートを実施。セミナーやガイドブックで支援制度の周知を図った。介護休暇・休業制度を充実させたほか、地元のドラッグストアと連携して、介護保険の対象外となる掃除や洗濯などの生活支援を割引で利用できる。介護用品も割引で購入できるようになった。

 JFEエンジニアリングでは在宅勤務制度を導入。上限は三カ月としているが、事情によっては継続も可能だ。NECの「介護休職給付金制度」創設など、経済的な援助をする例もある。

 だが、動きは大企業が中心で、中小企業との格差は大きい。一般社団法人「介護離職防止対策促進機構」の和気美枝代表理事は「中小企業は資金面で厳しいという現実はあるが、最低限、介護離職防止対策として相談窓口を置くべきだ。『相談窓口があります』と周知することで、介護をめぐる職場の雰囲気を醸成する効果も期待できる」と話している。

       ◇

 二十八日の(下)では、家族の介護をしながら就職活動する男性を紹介する。

 (三浦耕喜)

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