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<縁のカタチ> 「墓友」になる(下)

合葬墓の設計図を見て、建てた当時を振り返る松村弘子さん(右)と佐藤文子さん=神戸市西区のゆいま〜る伊川谷で

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 「ここで暮らし、亡くなってからも、向こうでずっと一緒よね」。神戸市西区のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)「ゆいま〜る伊川谷」に住む松村弘子さん(83)が、同じサ高住に住む友人の佐藤文子さん(89)に話しかける。すると佐藤さんは「ご主人のとこ、行かないの?」と、いたずらっぽく笑う。このサ高住には、入居者ら向けの合葬墓(共同墓)もあり、二人ともゆくゆくはその墓に入るよう申し込んでいる。

 松村さんは三年ほど前、亡くなった夫や義理の父母らが眠る家の墓をしまい、遺骨を大阪市内の寺で永代供養してもらった。夫と同じ墓に入らないことを責められることもあったが「夫は千の風になった。夫を思うと、すぐそばにいる感覚。同じ墓に入らなくても大丈夫」。

 このサ高住が開所した二〇〇九年に松村さんは入居。一緒に入居した中には、夫と死別した人や独身の人もいた。「亡くなった後が不安」という声もあり、入居者たちからの発案で、合葬墓の建設が検討され始めた。葬祭業者を交えて運営方法などを話し合い、近くにある霊園に合葬墓を建てた。

 松村さんは当初、夫と同じ墓に入るつもりだった。専業主婦として暮らし、女性の生き方を考える市民運動にも関わってきた。「私たちより上の世代は墓も、高齢者施設も『入れられる』という感覚。墓じまいや合葬墓は考えられなかったと思う。この十年ほどで社会の認識も変わり、こういうことを理解する人が多くなった」と感じる。

 合葬墓の話し合いに参加した松村さんは、自分の最期をどうするかということを話し合ううちに、仲間たちと意気投合。「私は地縁や血縁よりも、仲間との縁を大事にしたい。このメンバーだったら、同じお墓に入りたい」と思うようになった。その一方で、夫と一緒の墓に入らないことへの罪悪感もあった。

 しかし、墓じまいをせずに松村さんも家の墓に入ったら、墓は残り、東京や京都で暮らす三人の子どもたちの負担になりかねない。夫が元気なころは、二人で彼岸や盆にお参りに行くのを大変だと感じたことはなかったが、一人になって、年齢を重ねると「遠方にいる子どもたちには頼れない」との思いが強くなった。「お参りや掃除だけでなく、墓の管理費や寺への寄付も必要になる。子どもたちは気が楽になったのでは」と笑う。

 合葬墓には、入居者のほか、墓を管理する一般社団法人コミュニティネットワーク協会(東京)の会員や別々に暮らす入居者の家族、先祖らの遺骨も納められる。永代供養付きで、費用は一人当たり三十万〜六十万円ほど。

 佐藤さんは以前から自分の墓が気がかりで、サ高住に入居する前には京都市にある独身女性向けの共同墓地に入る契約をしていた。しかし「だれかが京都までお骨を持って行くのも大変」と、その契約を解約して、合葬墓を選んだ。松村さんらと親しくなれたことも大きかった。「感じがいい人たちばかりでよかった」と話す。

 時々、松村さんは佐藤さんら入居者と、先に逝った仲間の思い出話もする。仲間たちは、合葬墓で眠っている。「あの人も、この人も同じ墓に入っていると思うと、親しみが湧く。一緒に入る人は墓友。向こうにいっても友だちという感覚ね」。自分で選んだ墓を仲立ちに、新たな縁を育んでいる。

 (出口有紀)

 

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