トップ > 暮らし・健康 > 暮らし一覧 > 記事

ここから本文

暮らし

<わたしの転機> 「恩に報いたい」が原動力

カンボジアでの黒こしょう作りの現場を紹介する五津利雄さん=埼玉県入間市で

写真

 埼玉県入間市の五津(ごつ)利雄さん(79)は退職後、カンボジアの黒こしょう生産を支援している。かつては世界的な産地だったカンボジアだが、内戦で技術も販路も失われた。研究開発をしていた会社員時代、カンボジア出身の人たちに支えられたことから、「今度は自分が恩返し」と決心。培った経験や技術を生かしている。

◆会社員時代に開発した技術応用 カンボジアの黒こしょう加工支援

 四十代のころ、浄水場の水質測定器を開発していました。そのころ、大変お世話になったのが、試作や製造の一部を委託していた企業に勤めていたカンボジア出身の男性。内戦が続いていた一九八〇年に、家族や親類とともに難民として日本に逃れてきたそうです。

 急ぎの仕事で徹夜の突貫作業があるたび、電気関係の知識がある親族二人を連れてきてくれました。冷暖房もない作業場で、黙々と働いてくれました。

 日本人よりもまじめで正確な仕事ぶりに、頭が下がる思いでした。大きな仕事を支えてもらい、退職したら、今度は私がカンボジアのために何かをしようと決心しました。

 二〇〇四年に六十五歳で会社を退く前から、会社で得た知識を生かして何かできないか考え、現地で生産されている黒こしょうに目を付けました。かつてカンボジアは世界有数の生産地でしたが、内戦によって、栽培・加工技術も流通経路も失われていました。競争力を取り戻すためにはどうしたらよいのか考えました。

 そこで、ひらめいたのが透析用機器の殺菌用に開発した薬剤の応用です。こしょうは、加熱殺菌すると本来の味や香りを失ってしまいます。ですが、この薬剤を使えば、常温で殺菌できて風味も損なわれないのではないかと。人体への影響がないことなどをあらためて確認し、導入することにしました。

 退職後は、毎年十二〜翌年三月の収穫期を中心に三回ほど現地に行き、スタッフと洗浄・殺菌などの作業をしています。言葉には苦労しました。クメール語は発音が難しいし、専門的な説明となると通訳を通してはうまく伝わらない。「あちらに日本語を習得してもらう方が早い」と、学生二人を日本に招き、日本語学校に通ってもらいました。

 品質が向上し、現地の人も喜んでくれています。今後は販路を開拓し、より良い栽培法を探っていきたいです。人材や食料などで、日本がカンボジアに助けてもらう時代がくるかもしれません。「お互いさま」の精神で取り組んでいます。

 (今川綾音)

 

この記事を印刷する

中日新聞・北陸中日新聞・日刊県民福井 読者の方は中日新聞プラスで豊富な記事を読めます。

新聞購読のご案内

PR情報

地域のニュース
愛知
岐阜
三重
静岡
長野
福井
滋賀
石川
富山

Search | 検索