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障害年金受給に「2級の壁」 就労が難しい精神・発達障害者

 病気やけがのため、生活や仕事が制限される人に支給される障害年金。ただし、受給資格には個人差があり、厚生年金の加入者は障害の程度が3級でも支給されるが、国民年金の加入者はより重い2級以上でないと認められない。とりわけ精神障害や発達障害の場合、他の障害に比べて企業などへの就職が難しかった時代が長く、仕事に就けない上に年金も受けられない人は少なくない。

 名古屋市に住む四十代の自閉症の男性は三月、障害年金を不支給とする決定を受けた。自閉症は発達障害の一つで、言葉の遅れや独特のこだわりなどが特徴。二年前に受給資格があると知り、初めて請求したが通らず、その後、二度、国に不服申し立てをしたが、いずれも棄却された。三月の通知は、二度目の棄却を知らせるものだった。

 男性は「労働が著しい制限を受ける」として三級は認められた。もし、初めて医療機関を受診した「初診日」の時点で厚生年金に加入しているなどの条件を満たせば、月額約四万九千円の障害年金が受けられた。けれど、自閉症の診断を受けたのは五歳のとき。このため、障害年金を受給するには二級以上が必要だが、その条件を満たす「日常生活にも著しい制限がある」とは認められなかった。

 男性に収入はなく、現在は、七十歳前後の両親の老齢年金と、定年後の再雇用で働く父親の収入を頼りに実家で生活している。大学院の博士課程まで進み、必要な単位は取得したが、博士論文が書けずに十年前に退学。その後、小学校の発達障害児の支援員や自治体の障害者枠にほぼ毎年、応募しているが、採用に至ったことがない。

 主治医には「相手の意図を読み取るのが非常に難しく、人と接する場面で強い不安を覚える」と診断され、それが面接試験でうまくいかない要因だと自身も感じている。想定外の質問が出ると、パニックになって何も答えられなかったり、一つの質問にこだわり始めると一方的に話し続けてしまったりするからだ。

 一方で、知能は高く、その他の面は支障がないと思われがちだ。障害年金の診断書には「適切な食事」「身辺の清潔保持」など日常生活能力を判定する七項目の欄があるが、主治医から「できない」と判定されたのは「対人関係」のみ。それ以外は「おおむねできる」「助言や指導があればできる」とみなされた。

 高齢の父親がいつまでも働けるわけではない。男性は自立生活を目指して、精神科のデイケアで障害者向けの就労支援プログラムを定期的に受けているが、「せめて就職できるまで年金を受給できないと、自分の生活も苦しくなる」と不安を募らせる。

◆医師の主観が認定を左右

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 国民年金と厚生年金の加入者とではなぜ、受給資格に差があるのか。厚生労働省の担当者は「国民年金には、仕事をしていない学生や専業主婦も含むため、働けるかどうかではなく日常生活にどれだけ制限があるかが判断基準となる。一方で、被雇用者が対象の厚生年金は、働けない場合の所得保障として三級も認めている」と説明する。

 ただ、障害の種別によっては、そもそも働き口が少ないといった問題がある。二〇一七年の障害者白書によると、身体障害者と精神障害者(発達障害を含む)はいずれも推計で約三百九十二万人。厚労省の同年の調査によると、民間企業で働く身体障害者は約三十三万人だったのに対し、精神障害者(同)はわずか五万人。雇用環境が整ってきたのはここ数年のことで、企業や自治体の障害者雇用義務の対象に、精神障害者が加えられたのも、この四月になってからだ。

 障害年金に詳しい社会保険労務士の白石美佐子さん=愛知県安城市=は「症状を数値化できない精神障害や発達障害は医師の主観に委ねられる部分が多く、二級以上を得るにはハードルが高い。このため、働けない場合は厚生年金に加入していたかどうかにかかわらず、三級でも受給資格を認めるべきだ」と主張している。

 (添田隆典)

 

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