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「住宅診断」の説明義務化 中古物件取引で来春、法改正

屋根裏の木材の含水率を調べる診断士=東京都杉並区で

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 中古住宅を買う際、心配なのは建物に欠陥がないかどうか。そんなときに利用したいのが、専門家が建物の状態を調べる「住宅診断」(インスペクション)。日本ではあまり知られていないが、来年4月の法改正で取引の際の住宅診断についての説明が義務化され、普及の起爆剤となりそうだ。年間2000件以上の住宅診断を手掛ける「さくら事務所」(東京都渋谷区)会長の長嶋修さん(50)に、法改正のポイントや買い手の心得について聞いた。

 そもそも住宅診断とはどんなものなのか。「人間で言えば、健康診断のようなものです」と長嶋さんは話す。

 東京都杉並区にある築約四十年の木造二階建て住宅で、さくら事務所所属の住宅診断士の作業を見せてもらった。外回りでは壁のひび割れや雨どいの固定状況、屋内では天井の雨染みや床鳴り、給水管の水漏れなどを細かくチェック。目視だけでなく、「レーザーレベル」という機器を使って床が傾いていないかを見たり、屋根裏の木材の含水率を測って換気の状態を確かめたり。買い手は結果を踏まえ、不具合の程度や考えられる原因の説明や、対処法についてのアドバイスももらえる。

 「専門家が見れば、大きな欠陥があるかどうかはおおよそつかめる。不具合があっても原因や対処法が分かれば、むしろ納得して買うことができる」。4LDKの一戸建てなら費用は五万〜六万円が相場で、数時間あれば調べられる。

 中古住宅の売買が盛んな米国では、ほとんどの取引で住宅診断が利用されているが、新築が中心だった日本では根付かなかったという。だが、住宅が増えて空き家が問題となる中、国は中古住宅市場の整備に動きだした。その一環で、中古への不安を解消して売買を促そうと、住宅診断を初めて法的に位置付けたのが来年四月施行の改正宅地建物取引業法だ。

 改正法では、不動産業者が買い手や売り主と「媒介契約」を結ぶとき、住宅診断について説明し、診断する事業者をあっせんできるかどうかを示すことが義務化される。さらに、買い手に対する「重要事項説明」の中で、住宅診断の実施の有無や結果を説明しなければならなくなる。

 長嶋さんは「中古住宅を売り買いする全ての人が、住宅診断の存在を知ることになる」と期待する半面、買い手のメリットは薄いとみる。媒介契約も重要事項説明も、実務上は売買契約を結ぶ日にセットで済ませるのが通例で、「購入の話が固まってから説明されても意味がない」。業者の説明を待つのではなく、買いたい物件が見つかった段階で住宅診断を検討することが必要だ。

 物件に「お墨付き」を与えようと、売り主や不動産業者が住宅診断を利用するケースもある。長嶋さんは「大事なのは『第三者性』。買い手が自ら事業者を探して、複数の候補から選んだ方がいい」と話す。売る側と診断する側が口裏を合わせれば、欠陥を隠される恐れがあるためだ。実際、さくら事務所が請け負った診断の結果に対し、依頼者の不動産業者が「これでは買い主に説明できない」と、不具合の情報の削除を求めてきたこともあったという。

 住宅診断の事業者を選ぶとき、何に気を付ければいいのか。鉄筋コンクリート造の建物に詳しくても、木造は分からないという事業者もいる。物件の構造を調べた上で、経験豊富な事業者に任せることが大切だ。専門用語ばかりを並べられ、買い手が理解できなければ意味がない。かみ砕いて説明してくれるかどうか、電話やメールの対応で見極めるのも手だ。

 長嶋さんは、現状の中古住宅市場では建物の状態がきちんと評価されず、築年数だけで価値が決められていると指摘する。「悪く言えば『ロシアンルーレット市場』。言い換えると、建物を見極めて選ぶことができれば、すごくいい買い物ができる」と話す。

 (河郷丈史)

 

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